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「治くんのことが好き」


中学入って何度目かの告白
そう言えばツムもモテ期やとか言うとったな


「あー、ごめん。俺侑やねんけど」

「えっ、う、うそ…ごめんなさい」

「ええよ!俺でええんやったら付き合う?」


ニコッとツムの真似して微笑めば、目の前の女は顔を赤らめる
頷きかけた女を冷ややかな目で見つめた時やった


「なあ、宮治」


どこかから聞こえた声に顔を上げると、二階の窓から俺を見下ろしてる女がおった
あー、確かこいつは二宮の姉ちゃんの妹

そんでもって涼香の相棒


「なんや、二宮あかり」

「えっ…侑くんじゃ」

「何言うとん、そこにおるんは宮治やで」

「そういう事やから顔目当てなら他当たって」


淡々と告げれば女は羞恥のせいか顔を赤くして逃げてった
ツムと俺の違いも分からん女のことどうやって好きになれ言うねん


「ごめんやで、邪魔した?」

「いや、別に…てか何の用やねん」

「用があるんはこの子や」


二宮の隣からヒョコっと顔を出したんは涼香
その姿を見て冷や汗ダラダラになった俺
や、やばい…今の涼香見てたんか


「治、やっぱりモテるんやなあ」

「いや、今のは何というか、その」

「ちょっと妬けるわあ」


その一言にわかり易いほど動揺した
妙にどぎまぎしてしまう
さっきの女には何も思わんのに、涼香が相手やとこうも調子が狂う


「用事て何?」

「あ!そうや、今日の調理実習でカップケーキ作るねん」

「?」

「せやからちゃんとお腹空かせといてな、治いつも満腹なるまで食べてまうから言うとかな思って」


何これ、俺死ぬん?
こんな可愛ええ笑顔の涼香相手にこれ以上何を望めば…カップケーキやと?ほんま神様ありがとう、俺これからは真っ当に生きるわ


「あ、あともう一つ」


カップケーキにかなりテンションが上がっとった俺は涼香の表情が無になったのに気がついて硬直した


「今のフリ方は最低やと思うで」

「え」

「うっわぁ、どぎつい一言」


涼香の横でゲラゲラ笑っとる二宮はもはやどうでもええ、この冷ややかな目線が心に刺さる


「ちゃうんや涼香」

「ちゃうくない、そんな子に育てた覚えない」

「ご、ごめんなさい」

「うむ、よろしい。ほなまた後でね」


何とか場が収まったことに胸をなでおろした
けれどそこで気がついたんや

何で俺怒られとるん?
どっちかと言うとツムの方がこういう弄ぶようなことやっとるのに


「(アカン、イライラする)」


腹立つから部活の時ツムにボールぶつけたろ
そう決意して教室へと戻った

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