10.


草むらの中をかきわける音がし、


出てきたのは2人のよく似た人間の子供だった


そしてその2人の顔を見て、私と閑馬は目を見開いた


『………っぎ、銀……?』


女の子は赤い髪に銀の瞳


男の子は銀の瞳に鋭い牙


特に男の子は、あの時の銀の顔立ちにそっくりだったのだ


「お兄ちゃん達、ここで何してるの?」

「村の人じゃないよね?」


2人は私と閑馬には目もくれず、斬島さん達に話しかけた


「…おれ達は妖怪だからな。人間には見えないんだ」

『…そっ、か』



と、斬島さんが2人に近付いて話しかけた


「聞いてもいいか?


お前達の父親……または親戚に、銀≠ニいう名の男はいるか」


2人は顔を見合わせ、とても誇らしげな顔をして言った


「あたぼーよ!!この牙と瞳はその証だぜ!」

「村の英雄なの。私たちのおじいちゃん」笑

「英雄?」

「うん!あのね、おじいちゃんがまだ若かった時にね。おっきな…ど、どしゃ、さいがい?が起こってね、村が潰れちゃったんだって」


『……あの後、村が……?』

「そうらしいな。おれも知らなかった…」


「それで?何故お前達の祖父が英雄なんだ」

「村は潰れたけど、1番端っこにあったじいちゃんの家は無事だったんだよ。そん時じいちゃんはこの牙と髪のせいで鬼の子とかって言われてたらしーんだけどさ」

「村の人から苛められてたから、そのまま逃げるだろうって他の村の人は思ったんだって。でもおじいちゃんは逃げずに、死にそうだったみんなを助けたんだよ!」


「………そうだったのか。優しいお祖父さんだな」


「うん!おじいちゃんにね、どうしてみんなを助けたのって聞いたらね」

「じいちゃんの初恋はばあちゃんじゃなくて、狐の女の人だったんだーって。おれはその人を失ったから、もう誰も失いたくないーって」


『…………っ』


必死で口を押さえ、涙を堪える


「死んじゃったの?って聞いたら、違うよって。おじいちゃんが」

「じいちゃん、なんか変なこと言って逃したんだってよー!めっちゃ美人だったらしーぜ、勿体ないよなー」笑

「あぁ、そうだな」笑


「そっか……銀さんは、怒ってなかったんだね。…」


「ってか、白狐!そろそろ帰ろ、母ちゃんに怒られっぞ!」

「わ!ホントだ、もう日が暮れそう…銀太、いこ!」

「おう!」



『………えっ?』


今、白狐って…


「おい!お前達の名は、なんだ?」


斬島さんが聞くと、子供たちは誇らしげに笑いながら言った


「銀太!じいちゃんから一文字貰ったんだ!」

「白狐、私はおじいちゃんの初恋の人と同じ名前なの」


「「ばいばーーい!」」










また私は泣き出してしまい、結局は泣き疲れて寝た


起きたらそこはいつものベッドの上で、私の体も元の大きさに戻っていた


「む、白狐。起きたか」


『…っきりしまさ、みんなは!?私、私、尾で怪我させてっ…』


「大丈夫だ、皆もう完治して鍛錬に行った。…お前こそ、腹の傷は大丈夫か」


『そっか……良かった。…腹?』


そう言われ、お腹を見ると確かに大層な包帯が巻いてある


『あれ、私……』

「自らの尾で腹を突き破ったらしい。閑馬とやらを助けるためにな」

『…閑馬、は?』

「郷に帰った。近いうち会いにくると言っていたぞ」

『そっか…』

「ああ」





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