▼菫色の君と妹たち

「姉さま!会いたかったわ!」
「姉さん、元気にしていた?」
「わたしも会いたかったわ、かわいい妹たち。わたしは元気よ。ああほら、髪が絡まってしまうわ」
「ああ姉さま!姉さまだわ!姉さまの色!」
「え?……ああ……そうね、わたしはこの色よね」
「よかった、姉さんがまだその色を身に付けていて。あの海賊たちにおかしな色を着せられていたら私たち、腸が煮えくり返ってしまうところだったわ!」
「え…そ、そんな」
「そうよね、そうよね!シュミのわるぅい海賊だと思ったけど、姉さまを見初めたことと、姉さまからこの色を奪ってしまわなかったセンスは評価できるわね!」
「え」
「当然だわ!姉さんからこの色を奪うなんて重罪よ!極刑だわ!姉さんほどこの上品で高貴で麗しい色を着こなせる人なんて、界一大きなパーティーにだっていやしないんだから!」
「あ」
「姉さまがこなくなってからね、社交場で一度みんながこの色を着てきたことがあるの。姉さまの前じゃ恥ずかしくって試すこともできなかったんでしょうね!」
「え?」
「でも結果は散々だったわね、可哀想だけど。好きな色を着ればいいと思うのだけど、やっぱり姉さんの後だと見劣りしちゃう」
「私たちも、こっそり姉さまのドレスを着た頃があったわよね」
「ええ、でもやっぱり、これは姉さんが一番きれいに着こなせるし、姉さんを一番きれいに見せる色だわ」
「ええ、だって姉さまは本当にきれい!」
「あの海賊にはもったいないわ!」

「なるほどな」
「ピャッ!」
「ミャッ!」
「……あ……あ、ああ、も、申し訳ありませんペロスペロー様!妹たちはただ、ただ、わたしを元気付けようとしてくれただけなんです!どうか、どうか、お許しください……!!」
「許す?何を?」
「い、妹たちを……罰するならわたしを!」
「罰するわけないだろう!彼女らは本当のことしか言っていない」
「え、あ、」
「おれはお前を娶ったこの世で最も見る目のある趣味の良い男さ。さあ愛しい妻と、その妹君たち、おやつにしよう」


[ 2/31 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]