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「いやー、悪いんだけど急に募集人数を減らすことになってね」
「それって……」
「寮も丁度いっぱいになっちゃったし、今回は縁がなったということで」
「え、あのっ」


 言葉を続けようとした私の目の前で、一見人のよさそうなおじさんはドアをぴしゃりと閉じた。
 いや、待って。これは何かの冗談ですよね、ドッキリですよね、むしろそうだと言って。
 そんなことを思いながら、今日から出勤する予定だったはずの会社の前で、私は呆然と立ち尽くしていた。

 野崎ユウキ。次の誕生日を迎えればめでたく20歳になる、社会人だ。
 いや、社会人になる予定だった、という方が今は正しいかもしれない。


「え、ちょ、たんま」


 数ヶ月前に受けたこの会社の面接で、私は採用通知をもらったはずだ。
 寮もあるし、住む場所にも困らないと思って、かなり頑張って入ったっていうのに……、


「なにそれ」


 募集人数を減らした、だと。
 なんでそれを出勤当日に言うのっていうか減らすなら採用する前に減らせよっていうかこれからどうするの私。
 わけあって実家のようなところには帰ることができないし、寮だからと思って他にアパートもかりてない。

 頬に冷や汗が伝った。

 とりあえず、新しい働き口を大急ぎで探さないとこのコンクリートジャングルでは生きていけない。
 切り替えの早い自分によしと気合いを入れてまわれ右をしようとしたときだ、

 ドアがギィとあいた。
 
 そして、中から先ほどの職員さんが出てくる。ま、まさか、本当に冗談だった、とかッ
 淡い期待をもって、その人の言葉に耳を傾けた。



「あ、そうそう、寮に入れるはずだった荷物は全部ここに入れたから」
「……え」



 それだけを私に告げると、再びドアが閉じられた。
 持たされたメモのようなものを見てみると、


「新、宿」



 どうしてか、私の荷物の行き先は新宿らしい。建物の名前的に、マンションだろうか。
 普通は郵送元に返すものだと思うんだけど……このマンションは倉庫の役割でも兼用しているのかな。
 期待した分、さらに気分が落ち込ませながら、私はメモに書かれた住所まで行くことにした。
 



 (不運はまだまだ止まらない)




ご丁寧に、部屋の番号まで指定してある。



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