(この先もずっと一緒に)


「俺だって頑張ってんだよ!!それをお前は何もしてないなんて言い方しやがって!!」
『別にそこまで言ってないでしょう!!』

朝起きて一番にやってしまった。
最近は家でもすれ違いが続いていて、なかなか時間も合わなかったからだろう…。
ちょっとした言い合いが声を上げるまでの喧嘩になってしまった。
その日はお互い無言のまま家を出た。

疲れた体に鞭を打つように自宅へと足を進める。
会社を出る前にちらっと目に入った時計がさしていた時間は22時半を少し過ぎたところだっただろうか。
もう目の前に見えてきたマンションを視界に入れながら、今は23時過ぎたところだろうかと足を進めながら思う。
もう腕を上げてまで手首についている時計を見ることさえ億劫なくらい今日は何かと疲れた。
エレベーターに乗って3階まであがり、鞄から鍵を探していると先にドアが開いた。
開いたドアの向こうには同居人の彼がいつもの優しい表情ではなく、少し機嫌が悪いとも言える表情で迎え入れてくれた。

「…おかえり」
『ただいま…』
「…ご飯温めてやるから先に風呂入れよ」
『わかった…』

一緒に住んでいる彼はこう見えて2年半ほどお付き合いをしている。
彼と初めて会ったのは彼が大学1年で私が大学3年のとき。
当時バレー部のマネージャーをしていた私は入部したての彼と意気投合し、初めて会った日から2ヶ月後ぐらいにお付き合いを始めた。
それからはあっという間で、喧嘩や別れ話をしたのは1度ではないがそれでも結局はこうして一緒に住むような仲にまで進展した。
なんだかんだで彼は大学3年になり、私は社会人1年目の年を過ごしていた。
それももうもうすぐで2年目になるんだなと思っているあたりやはり時が過ぎていくのは早いなと実感する。
彼も本格的に就職活動を開始し始め、私も最後の追い上げというかのような仕事の量が増えて何かと2人でゆっくり家で過ごすことが少なくなってきた。
それでも彼は私に愛想を尽くすことなく一緒にいれている。
そんな彼の気持ちに甘えている自分が少し嫌だったりもしていて、せめていつも家のことをしてくれているお礼に仕事が休みのときはできるだけ家に仕事を持ち込まないようにして彼をうんと甘やかすというのが最近の楽しみだったりもする。

今日はシャワーだけで上がり、髪の水分をふわふわなタオルでふき取りつつリビングに戻るとテーブルの上にはおいしそうなご飯が並んでいた。
戻ってきた私を見た彼は座っていたソファーから立ち上がってキッチンへと入っていった。

「…早かったな」
『…疲れたからシャワーだけにした』
「そうか…。なまえ」
『何よ…』
「今朝は言い過ぎた…。悪い…」
『別に…。私も言い過ぎたから…』
「メシ食うか?」
『…うん』

喧嘩しても最近はその日に仲直りすることが多い。
それも長く付き合ってこその賜物だ。

「疲れてるなら早く寝たほうがいいな」
『明日休みだから大丈夫。それに最近あまり一緒にいれてないし…』
「朝も喧嘩しちまったしな…」
『そうだね』
「DVD借りてきたけど一緒に見るか?」
『うん』

一緒に食べるとか関係なくどちらかが食べている間もテーブルの椅子に座ってコーヒーなどを飲むのがこの家の唯一のルール。
同じ空間にいるのにテーブルで一人で食べるのは寂しいからというお互いの意見から決めたこと。
これは喧嘩をしていても必ずすると決めた。

「俺も明日講義ねーから久しぶりにどこかにでも行くか?」
『それいいね。久しぶりのデート?』
「だな。行きたい所ないか?」
『んー…最近隣町に大きいショッピングモールできてなかった?』
「そういえばできてたな」
『そこ行ってみたい』
「わかった」

その日の夜はソファーに座る鉄朗の膝の間に座ってマグカップを両手で包むように持って一緒にDVDを見て過ごした。

← |

back

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -