(この先もずっと一緒に)


自然の目が覚めてベッドのサイドテーブルに置いてある時計に目をやると9時半。
いまだに枕を頭を挟んで寝ている鉄朗の体を揺さぶると低いうなり声をあげながらゆっくりと起き上がった。

『おはよう』
「…はよ。顔洗ってくるわ…」
『うん』

朝が得意とは言えない鉄朗はのそのそと大きな体を動かして洗面所へと消えていった。
彼が戻ってくるのを待ちつつ、朝ご飯の用意をしていく。
これは別に決まりごとではないのだが休みの日のご飯は私がしている。
いつもは鉄朗にやってもらっているので休みの日ぐらいはやらないとと自分が思っているだけで鉄朗は別に自分がやっても構わないと思っているみたいだ。
そんな感じで朝を過ごしてゆっくりと支度をして昨夜に言っていたショッピングモールに向かった。
最近できたということでやはり家族連れやカップルが多かった。
カップルが多いなぁ。なんて声を漏らせば俺たちもだろと言われてなんだか少し気恥ずかしくなったのは秘密にしておこう。

「あ。俺寄りたいところがあるんだけど」
『帰りしなに?』
「そう。ちょっと遠回りだけどよ…」
『いいよ。今日は私に付き合ってもらったからそれぐらい付き合わないとね!』
「ん。さんきゅ」

ショッピングモールを出て電車に乗り、郊外にある小さな森に着いた。
何故こんなところにを思ったが鉄朗の行きたい場所なのだからと思い、何も言わずに繋がれた手をぎゅっと握った。
少し足場の悪い道を歩いていく。
ヒールの靴じゃなくて良かったと頭の片隅で思いつつ、しばらく歩いて見えたのは白くて小さな教会だった。
木と木の間から差し込む光がちょうど教会だけに当たっていて光っているように見えたそれはとても綺麗だった。
素直な気持ちが知らぬ間に声に出てしまうほど本当に綺麗だった。

『綺麗…』
「だろ?高校のときにここの近くにある学校に合宿で来たとき、夜にちょっとふざけて森に入ったときに見つけたんだ」
『そうだったんだ』
「入ってみるか?」
『入れるの?』
「あぁ」

エスコートするように手を引っ張ってくれる鉄朗に素直についていく。
教会の中にも光が差し込んでいてステンドグラスのカラーが真っ白な床に映りこんでいてとても幻想的な教会だった。
奥の方まで歩いていくとその幻想さはなくなり、今度はさっきとは違う幻想さが広がっていた。

『すごいね…。こんなところで結婚式してみたい…。身内とか親しい人だけ呼んでこっそりとやりたい…』
「そういうと思った」
『でも、どうして急にここに?』
「…俺たちさ付き合って2年半ほど経つだろ」
『うん。長いようで短かったようでって感じだけどね』
「…あのさ、なまえ」
『うん?』
「俺はまだ学生だし就職も決まってない。大人と比べてもまだまだガキだ。それでも俺はずっとなまえと一緒にいたいと思うし、なまえ以外の人は考えられない」
『鉄朗?』

肩を掴まれて向き合うような形になった私と鉄朗。
目線よりもずっと上にある鉄朗の顔を見るといつも以上に真剣な表情をしていて、なんだかこちらも緊張してきた。

「…なまえ。左手出して」
『…うん』

言われたように素直に鉄朗の方へ左手を出す。
さすがの私だってなんとなく鉄朗が言おうとしてることも、今からしようとしてることもなんとなく分かっているつもりだ。
バクバクと心臓の音が耳の内側で大きな音を立てて響いている。
ゆっくりと左手の薬指にシルバーの"それ"が通っていく。

「俺が大学卒業するまでまだ1年ちょっとかかるけど…。…俺と結婚してください」
『…はいっ』

嬉しさのあまり1つ流れた涙を親指で拭って優しくキスをしてくれた。
まるで結婚式の予行練習かのようなキスだった。


end




美咲様、お久しぶりです。
前回に続き、今回もリクエストいただき本当にありがとうございました。
おかげさまで当サイトも20万打を達成することができ、まさかここまでとは思っていなかったのでとても驚いています。
連載以外としてのハイキューの小説はこれが初めてなので嬉しい気持ちでいっぱいです。
思ったほど切なく書けていないでは…と完成し読み返し後気づきました…。
どちらかというと微切甘にもなっていないのではないかと思ってます…。
マイペースすぎるほどマイペースに更新していますが、いつでもリクエストお受けいたしますのでよろしければお願いします。
ありがとうございました!



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