(彼の元へ)


頑張っていろいろと積み重ねてきた約3年間が終わりを告げた。
優勝には手は届かなかったがそれでも悔いのない戦いだったと思う。
ブザーが鳴ったとほぼ同時に終わった試合に、大坪くんや宮地くんに木村くんたち3年生メンバーはお互いの肩を抱き合って涙を流していた姿は今でも明細に覚えている。
私たち3年生は部活が終わったと同時に受験勉強のシーズンが始まった。
むしろ、スタートからすれば遅いぐらいだ。
WCが始まる前の公募推薦などで一応みんな滑り止めは決まっている。
頭のいい大坪くんや宮地くんはこれからが頑張り時だろう。
最近は4人揃って図書室で勉強することが多くなった。
1人でやるよりも揃ってやったほうが捗るだろうという大坪くんからの提案だった。
それぞれ得意教科の教え合い。
人に教えるということはその人のためだけではなく自分のためにもなるので少し得をした気分になる。
今も4人で大きな机を占拠して志望校の過去問を解いたりと、それぞれの勉強をしている。
しかし、最後の試合の高揚が治まりきっていない私はどうしても手が止まってしまう。

「おいこら。何ボーっとしてんだ」
『いっ!?』

突然の額の痛みに現実に強制的に戻される。
目の前には仏頂面でデコピンを喰らわせてきた張本人。
そんな彼の隣に座っている木村くんはニヤニヤと口角を上げており、私の隣に座っている大坪くんは苦笑しながら大丈夫かと声をかけてくれた。

『な、なんとか…。いきなりとか酷すぎるでしょ!?木村くんもニヤニヤしない!』
「ボーっとしてるお前が悪い」
『だって…!』
「まぁすぐに切り替えろっていうのも難しい話だと思うぞ」
「………」
『?宮地くん?』
「なんでもねーよ」
「フッ…」
「ククッ…」
『?何なの。2人とも笑って…』
「いや…。最近どうも焦っているみたいだからな」
『焦る?誰が?』
「お前らも口じゃなくて手を動かせよ!」
「宮地ー?図星だからってそりゃねーよ?」
「うっせー!」
『何なのもう…。いっつも3人でそんなこと言って私だけ仲間外れにする…』
「だとよ宮地」
「早く教えてあげたほうがいいんじゃないか?」
「あぁくそっ!俺は帰る!」
 
宮地くんは早急に教科書や参考書を片付けて、ささっと図書室をでていってしまった。
そんな様子に2人はまだ微笑んでいる。
あ、分からないところを宮地くんに教えてもらおうと思ったのに…。

「みょうじ」
『ん?』
「追いかけて来い」
『へ?』
「ずっと我慢していただろう?もういいんじゃないか?」
『大坪くん…』
「見てるこっちが世話焼きたくなるぐらい態度に出てたしよ」
『木村くんまで…。でも約束したの。全部終わるまで待つって』
「十分待っただろう?それに宮地の全部というのは部活のことだけだと思うぞ」
『えっ…』
「宮地ってああ見えて頭いいだろ?けどさすがに部活に勉強に恋愛の3つを両立できる気はしないって言ってたぞ。要するに何かひとつ減ればできるってことだろうよ」
「これ、みょうじに話してもいいことなのか…?」
「大丈夫だろ。まぁもう部活は引退して勉強しかねーからよ。とりあえず追いかけてみろ」
『2人とも…。ありがとう…!』
「おう」
「いい報告を待っているぞ」


2人の言葉を背に受けて図書室を飛び出した。


((もう我慢しなくていいんだ…!だったら私の思いを全部…!))


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