(膨らんでいく想いに…)


宮地くんと初めて2人でお昼ご飯を食べた日から数週間が経った。
私はあれ以来、宮地くんのことを意識しすぎて最近はまともに話もできない。
授業が終わり、いつも通り教科書やノートをカバンの中に仕舞って肩にかけた。

「あ、なまえ!」
『?』

教室の扉に手をかけたところで後ろから名前を呼ばれた。
当然のごとく呼ばれればその方向に振り向いた。

『榎本くん?』
「わりぃ今から部活だよな?」
『うん。どうかした?』

榎本卓哉くん。
同じクラスのムードメーカー的存在で、クラスのみんなから好かれている。
実は彼とは中学校の頃からの付き合いだ。
私を名前で呼ぶのは榎本くんと高尾くんぐらいだ。
双子姉のことは何故か苗字で呼んでいる。
なんだかんだで私と宮地くんが話しているといつもちょっかいをかけてくる。

「これさ、宮地に渡しといてくれねー?あいつクラス違うし全然会えねーんだよ」
『えー、自分で渡しなよー…』
「いいじゃんよ。俺たちの仲だろー?」
『あれ、そんな仲だったっけ?』
「うわっひでーの」
『とにかく無理っ』
「なんでだよー」

最近宮地くんといることが多くなった。
だからか、宮地くんと一緒にいると落ち着くしすごく頼りにしてしまう。
そして何より、一緒にいるとドキドキすることが多くなった。
お昼休みのときの彼はいつもとどこか違って、可愛くもありそれと同時に格好よくもあった。
いろいろと考えていると百面相をしていたみたいで、目の前にいた榎本くんが心配した顔をしていた。

「…なんかあったのか?あいつと」
『えっ。いや、別にケンカとかしたわけじゃないよ』
「なんだ、ならよかった。もしかしてあれか?今頃になって宮地のこと気になりだしたとか?」
『えぇっ?!い、いや別にそんなん、じゃっ…!』
「なんだ図星か。お前って本当に昔からわかりやすいよなー」
『お願いだから双子姉には言わないで…!』
「?なんでだよ。大好きなねーちゃんに好きな人できましたって相談しろよ。そっち方面の話はあっちのほうが大先輩だろ?」
『お願いだから言わないで…。ただでさえ双子姉はイケメン好きなのに…』
「…っ…くくっ…」
『ちょ、なにがおかしいのよ!』
「いやー?なんでもねぇよ。お前が心配してるようなことはねーと思うけどな」
『なんでそう言いきれるのよ…』
「俺さみょうじとバスケ部レギュラーが一緒にいるのを何回か見てんだよ」
『えっ…』
「あー、心配すんなよ?話は最後まで聞け」
『う、うん…』
「俺が見た感じではみょうじは宮地狙いで会いに行ってる」
『そんな…』
「でもな、宮地やつおもしれーぜ?」
『…?』
「あいつさ、みょうじが一生懸命自分に話しかけてんのに…」

―ガラッ!

榎本くんの言葉を遮るように、背を向けていた扉が勢いよく空いた。
びっくりして振り向くと、そこには眉間にシワを寄せて少し不機嫌なのを隠しもしない宮地くんが立っていた。

「あー!宮地じゃん。噂をすれば…」
「あ?んだよ。人の話してたのか」

そう言葉と一緒に降ってきたのは鋭い視線。
余りの鋭さに一瞬だけ恐怖を感じた。
見上げた顔が動かせない。
合わさった視線が逸らせない。
それほどまでに宮地くんから恐怖を感じていた。

「み、宮地?どうしたよ。すげーこえーぞ」
「別に…。誰かさんが最近避けてばかりでまともに話ができなくて機嫌悪いわけじゃねーよ」
「(いやいや、もろ機嫌悪いって言ってるようなもんじゃねーかよ…)」
「…ちょっと来い」
『えっ。ちょっ、離しっ…』

ガシッと掴まれた腕。
そして、長い足で歩いて引っ張っていくものだから、やや強制的に走らされている状態で教室から出ていく。
扉から出た榎本くんは廊下でこっちに手を降っていた。

「(健闘を祈る…!)」
『手を降るんじゃなくて助けてよーっ!』

心からの悲鳴が、実は開け放たれた窓から1年の教室にいたはずの高尾と緑間にも聞こえていたと言うのは後で知ることになる。


((訳わかんないっ。なんでこんなのことに…))
((イライラする…。楽しそうに話してんじゃねーよ…))


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