(本当の望みは…)


桐皇学園の人たちと誠凛対霧崎第一の試合を見て終わった後、さつきと別れて帰路に立っていた。
すると、カバンの中に入れていた携帯がメールを受信したのを知らせるために数回震えているのを感じた。
カバンから携帯を取り出し、ボタンを押していくと受信ボックスには知らないアドレスから一件のメール。
とりあえず、内容だけと思いそのメールを開いてみた。
そして、メールに書かれていた内容に目を見開く。

『青峰、くん…?』

そのメールには、涼太に連絡先を聞いたということと話があるということだった。
どう返事をしようか迷っていたときに、涼太から着信がきた。

『もしもし?』
《なまえっち!いまどこっスか!?》
『どこって…。誠凛の試合見て今終わったとこでアパートに向かってるけど…』
《青峰っちと一緒じゃないんスね!?》
『何をそんなに慌ててるの。青峰くんならさっきまで一緒に試合見てたけど』
《そーっスか…。いきなり青峰っちからメール来て、もしかしてって思ったんスよ。あと勝手に連絡先教えてしまってすみませんっス…》
『いいよ。……ねぇ涼太』
《はいっス》
『もしかしたら青峰くんは何か気づいてるかもしれない』
《…あの時のことっスか?》
『うん。青峰くんはあの時に相手した子を心のどこかで探してるってさつきが言ってた』
《…なまえっちはどうしたいんスか…?》
『…わかんない。でもインターハイで戦ったときに思ったの。笑ってプレイしてほしいって。あの時みたいに笑いながらバスケしてる青峰くんを見てみたいって。…ごめんね、ウインターカップ前にこんなこと…』
《いいっスよ。青峰っちと話すんスか…?》
『どうしようか迷ってたとこ』
《そーっスか…》
『でも、話すとしてもどっちかのウインターカップが終わってからだけどね』
《なまえっちが決めたならオレは何も言わないっス》
『うん』
《とにかく気をつけて帰ってきてくださいっスね。ご飯作って待ってるから》
『わかった。ありがとう』

電話を切って携帯をカバンの中に仕舞う。
今日の試合で誠凛が勝ったことの意味を考えると少し気持ちが舞い上がってしまう。
しばらく歩いていると、ボールをつく音が聞こえてきた。
そっちに足を向けるとさきほどまで試合をしていた彼らの姿があった。何故だか、火神が黒子くんの頭にボールを投げつけていた。

『本当に仲がいいんだね』
「あ?」
「みょうじさん」
『試合お疲れ様です』
「観に来てくれていたんですね」
『昨日は涼太が来てたけどね。さすがに毎日は来れないからその代わりに』
「そうだったんですか。黄瀬くんはどうですか?」
『インターハイに負けたのはショックだったけど、でももう過去を嘆いてる時間はないからね。それに今日の試合の結果を伝えたら、それはそれでうるさいと思うよ』
「黄瀬くんらしいです」
『柄にもなく私もテンション上がってきてるし』
「そうですね」
「こいつなんて武者震いしてんぞ」
『何となく分かるよ。きっと今年が最初で最後だろうしね』
「あ?何がだよ」
「火神くん…。分かってなかったんですか?」
『もしかして、バカなの…?』
「青峰くんと黄瀬くんと同類です」
『あ、バカなんだね』
「なんでそれで伝わるんだよ!つーか、お前もちょっとはフォローしろよ!」
「フォローできるレベルの話じゃないじゃないですか、火神くんの場合」
『涼太も同じようなものよ』
「黄瀬も青峰もそんなになのかよ…」

なんとなく思ってたけど、やっぱり想定内というところか…。
天才と変人は紙一重、だっけ…?
それって私も入るのかな…。

『まぁとにかく今年のウインターカップは荒れるだろうね』
「そうですね」
「だから何でだよ」
『まぁこうなることは何となく分かってたけどね。それぞれの強豪校が"キセキの世代"を手に入れた。それはウチもそう。結局その"キセキの世代"が高校生になって分かっているのは間違いなく"キセキの世代"を獲得したとこは上位にあがる』
「今年のウインターカップは特別枠が設けられています」
『そして、"キセキの世代"を獲得した高校全てがウインターカップ出場が決定してる。要するに、"キセキの世代"と"幻の6人目"である黒子くんを含めた帝光中の天才全員が出揃うことになる。ウインターカップは"キセキの世代"たちとの全面戦争になるって言ってもいいと思う』
「はっ!なるほどな。そりゃ楽しみで仕方ねーわ!」
「お前ら!勝手に消えてんじゃねーぞ、ダァホ!」

意気込んだ火神の後ろから足が飛んできた。
まるで笠松先輩の足技とそっくりで、それをやったのは誠凛の主将である日向さんだった。

「いてぇ!!」
「ま、ビビってるよりはいいけどな」
『あ…』

試合を終えた誠凛の人たちもやってきた。
その中にいたリコ先輩と目が合う。

『リコ先輩』
「あら。観に来てくれてたのね」
『はい』
「あれカントク。いつの間に海常のマネージャーと仲良くなったの?」

猫口をした先輩らしき人がリコ先輩に言う。
なんとも素朴な質問だ。

「練習試合をしたときに連絡先を交換したの」
「海常の?」

海常という名に反応したのは"無冠の5将"の1人である鉄心・木吉鉄平。

『確か、木吉鉄平さん?』
「あぁそうだ」
『復帰されたんですね』
「おかげさまでな」
『リコ先輩。お互いウインターカップは悔いの残らない試合にしましょう』
「そうね。当たったときはよろしくね」
『こちらこそ。いま海常は新しい練習方法を組み入れてます。主に私の眼が中心ですが。それに練習試合のこともあるので』

好戦的な笑みを浮かべると、彼女もそれに答えてくれた。
そして、後ろにいた黒子くんは本当に楽しみといった顔で私に伝言を頼んだ。

「黄瀬くんに楽しみにしていますと伝えておいてください」
『きっと黒子くんに会ったこと話したらうるさいと思うよ』
「なんとなく想像できます」
『でしょ?では次会うのはウインターカップかな?』
「そうですね。お互いがんばりましょう」
『もちろん。では失礼します』

一度頭を下げて、誠凛の人たちを別れた。
アパートでご飯を作って待ってくれている涼太に今日あったことをどこから話そうと思いながら足を進めた。


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