そしてある日、エヴァンは違う仕事を探そうとソルトに断りを入れて一人、都の北の方へ出向いた。そこは大きな風車が限りなく近く、風が入り組むようにごうごうと唸っている。エヴァンは纏めていた髪を揺らしながら多くの事に思いを馳せた。
ソルトはこの都にいるまでエヴァンの所を欠かさず通ってくれている。時々、あの少年も連れて色んな話を聞かせてくれた。世界は広い。彼女達に話を聞けば聞くほど、エヴァンは思い知らされた。野原に咲く花の香りに思わず目を細めた時、エヴァンは髪は後ろへと引っ張られた。後ろへ倒れる、エヴァンは悲鳴を上げたが、その途端に口元に布が当てられた。恐怖でもがき、暴れようとするが徐々に意識が遠のいていった。あてられた布からは微かな花の…眠り花の匂い。
そして確かに、その布を押さえる手は見覚えるのある、野太い指だった。










時々夜食を持って訪れた。
「ああ、エヴァンありがとう」母は少しやつれた顔でエヴァンに感謝を述べた。そんな母の様子にエヴァンは眉を寄せた。
「母さん、あまり無理はしないで。父さんだって母さんが倒れるまではやって欲しくないと思うわ」
肩をあげてティーを淹れた。母は「そうね」と相槌を打って「でも、もう終わりよ。種には特殊な水が必要だってことがわかったの。あとはその水の調合だけなの」途端に嬉しそうに母はエヴァンに笑顔を向けた。
「これで父さんの仕事が成功するわ」まるで娘のように目を輝かせる母の様子にエヴァンは目を細めた。母は本当に父を愛していたんだと、エヴァンは思った。



気づいた時、エヴァンは白いベッドの上にいた。起き上がろうとするが、両手首を布で締められベッドに括り付けられていた。「う、うう」声を上げようにも口にも捻られた布で喋れない。エヴァンはパニックになった。これをした男、最後に意識が遠のく中で確信した男、…モース
「エヴァン、その格好はお前にぴったりだ」そこには愉快気にベッドに膝をつき、エヴァンの金髪に手を通すモースがいた。うううう、くぐもる声と恐怖。
ポールは「ああ、よしよし、と」言ってエヴァンの唇に当てていた布をとった。
「んっ」エヴァンは息を吐き出し、モースを睨み付けた。
攻撃的な目を向けられたモースは髪に絡めていた手に力を入れ、ぐいっと力任せにひっぱった。エヴァンは苦痛に唇をかみ締め叫んだ「一体どういうつもり…!」
「黙って俺の言うことを聞け。俺は客だろ?お前は娼婦じゃないか」モースがそう言えば、エヴァンは抵抗する。そこでモースはポケットに入れていたものを取り出した。

チャリ、と金属音。エヴァンはその微かな音に聞き覚えがあった。
そう、それは父と母の片身の種―
「返して…」エヴァンは身を乗り出そうとするが、括り付けられている動けない。モースは首を振った。「言うことを聞かないのなら、これがどうなるか」エヴァンは途端に恐怖に陥った。父が死んで、母が死んで、エヴァンに残ったもの。モースは服を脱いで、エヴァンの震える腕を握り締め、布をはいだ。
「エヴァン、今夜は楽しもうぜ」
エヴァンの首筋にモースの顔がうまる。舌が肌を這う感覚にそっと目を閉じた。

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