その日ダリアの元へ訪れたが、どこにもいなかった。ソルトは探すが、狼が「匂いが近くにしない」と言った事から、どうやら近くにはいないようだ。
いつも同じ時間に来るので、てっきり居ると思っていたのだが…とりあえず、村の中央へと向かった。久しぶりなのでどうにも、この前来たよりも雰囲気が変わっていた。
「お祭りかしら」
それでもどこか祝い事と言うより少し奇妙な雰囲気だ。それでも何かの祭典のようにあちこちで装飾がなされている。どこか粛々としている村人の中に先日、ダリアの話をしてきたダンがいた。ソルトはちょうど良いと思い、ダンの方へ手を振った。
視界にソルトと狼を入れたダンは、この前の譲ちゃんか、とこちらへ歩いてきた。ソルトも駆け寄り、周りを見渡しながら町の様子を聞いた。するとダンはああと相槌を打ち当たり前のように言った。
「シヴァ神へ捧げる人間が見つかったんだ」ダンは声量落としてまるで呪文のように言った。
「ほら、前に言った村奥にいる呪い子。あの子供が選ばれたんだ」
ソルトは目を見開いた。すぐさまそのダンの胸元を引っ張り、「どうゆう事なの」大声で怒鳴った。ソルトの態度が豹変したので、ダンは慌てるがソルトの覇気に押され、どもりながらもたどたどしく説明をした。「まじないの婆さまがお告げをして―、シヴァが、いいい生贄を欲しがり、村の豊作と共に交換だってっ」
ソルトはそれを聞いて信じられないと目の前を通過する村人達を見た。派手な装飾品や壇上。人が死ぬ儀式を今夜行うのだ。
なら、ダリアがいなかったのは連れて行かれたからなのか。もう一度ダンの胸元を揺すれば、勘弁してくれとばかりにダンは眉下げて答えた。
「日没と共にシヴァの神殿で生贄が捧げられるっ 今は事前準備だ」
日はもう暮れる。太陽は傾き、光は消えてゆく。ソルトは周りを見渡し、儀式の場へと走った。「シヴァは輪廻の神じゃなかったの」全身を使って駆け抜けながら叫ぶと「忘れたのか。シヴァは願いの神でもある」狼がそう答えた。
―そうだ。シヴァは引き換えに何かを与える神。得意気に話してくれたジェーンが浮かんだ。ならば、今回のその『引き換え』がダリアと言う事なの―。
ソルトは唇をかみ締めた。一方の狼は気だるくなっていく身体の重さに嫌気が差していた。獣らしいスピードもでず、どちらかと言うとソルトが前へと足を先に進めていた。

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