擦鹿擦鳴 里ぬけ(キリリク)

 
大蛇丸の企み、木の葉崩しは失敗に終わり、大蛇丸の全ての術と交換に三代目は息を引き取ったのだった…。

哀しみに浸りながら、皆が三代目を見送る。
そんな中、鳴門は涙を流す訳でもなく、ただ無言の侭…。

「…」

爺、テメはー其れでよかったのか?
大蛇丸の為なんかに死にやがって…、馬鹿じゃねーの?
甘いんだよ…テメーは、何時も何時も。
俺よか弱い癖して…年な癖して…でしゃばんじゃねーよ。

心の中で唱えた其れは、鳴門の目尻を熱くした。

「…馬鹿野郎」

回りに聞こえないように小さな声で、天に召されてゆく三代目へと鳴門は呟いた……。
















三代目が亡くなって、鳴門は仮面を付ける事をしなくなった。
もう、大蛇丸の木の葉崩しで全民や忍達にバレてしまって、隠しても意味を為さない。
其れに、元気が取り柄の裏の顔をする気力もない…。

鳴門にとって三代目は初めて理解してくれた唯一の人間…。

凄く大切な人間だったからこそだから余計に辛い…。

「…」

執務室の机をゆっくりとなぞる手…。



『鳴門はワシの孫じゃ…いや、其れ以上の存在じゃ』

何時も向けてくる笑顔が消えた…。

『馬鹿者!何を考えておる!!』

説教する声も消えた…。



執務室に残るは、三代目の爺臭いニオいと遺留品…書類の山。

「阿呆みてー…」

溜息を付き、鳴門は誰もいない執務室を後にした。

執務室に行ったら、何故か何喰わぬ顔で三代目が椅子に座っているかもしれない…。

また、しわくちゃな顔で笑ってくれるかもしれない…。

また…、説教してくれるかも…しれない…。




そう思ってしまった…。
だから、足を運んだけども…其処は裳抜けの殼で…。
現実に引き戻されてしまった…。





嗚呼、爺は死んだんだよな…。










仮面を外してから、民達は一層鳴門を警戒していた。

あの力の源は『九尾』なのか…?
放っておいて大丈夫なのか…?

見せつけられた鳴門の其の大きな力。
木の葉襲撃に多いに活躍した鳴門と鹿丸。
彼等がいたからこそ最小に妨げられたと言うのに、中にはそう思わない民もいた…。

「木の葉は自分が守りましたって顔ね…」

街中を歩く鳴門に、珍しく民から話し掛けられた。
そちらに目を向けると其れは女。
ギロリと鳴門を睨み付けていた。

「…あ゛?」

「木の葉を救ったのは命を張って守って下さった三代目火影様よ!アンタじゃない!!」

「…なら、其れでいいだろ。一々そんな下らねー事で俺を呼び止めるな」

そう言い放ち、鳴門はシュッ、と姿を消した。










つまらない…。
毎日が楽しくない…。

あれから、毎日の様に民達から飛んで来る言葉。

「此の疫病神!!」

石が投げられる。
其れに当たってやる程、鳴門も優しくもない。
軽々と避けながら歩いていく。

「木の葉から出てゆけ!」

「全部お前の所為だ!化け物め!!」

「三代目を返せ!!」

何故か知らないうちに三代目が死んだ事を自分の所為にされている…

其れを聞いた鳴門は立ち止まりゆっくりと振り返った。

「…俺が爺を殺したと…?」

其の男を睨み付け、ゆっくり近付いた。

「そっ…そうだ!お前なんかがいっ……」

話終わる前に男の首は跳ねられた。

「買Lャーーッ!?」

「人殺しー!!」

男の首が跳ねられた事に、民達は騒ぎ始めた。

「鹿…」

「鳴がこんな男ごときに汚い血で手を汚す必要はねーよ…」

男の首を跳ねたのは鹿丸だった。

「手を貸してくれるか…?」

「嗚呼。もちろん…」










10分後…。
木の葉の民達は、鳴門と鹿丸によって全滅させられた…。

其の事態に次々と里の忍達が集まって来る。

辺り一面に血の海と化していて…。

凄まじい血の臭いと原形があるかないかの塊がゴロゴロ転がっている…。

「狽ネっ…何…此れ…?」

「酷い…」

先ず始めにやって来たのは、2人もよく知った人物。
猪と蝶辞と桜と佐助。

「どうしたの鹿丸!?」

「…鳴門」

此の状況を見た4人は、瞳を見開いていた。

「…何で…?」

目の前にいる彼らの顔や服には沢山の返り血。
彼らの回りには幾つもの人であった塊がゴロゴロと転がっていた…。

「…アンタ達が、殺したの?」

信じたくない…。
信じたくないけれど…此の状況で免れる事は絶対ないに等しい…。

「嗚呼…」

向けて来る瞳は冷たくて…。

「何で!?どうして!?」

「…」

「此奴らが鳴を分かろうとしなかったからだ…」

4人を見据え、鹿丸はそう放った。

「何言ってんのよ!!」

「そうよ!鳴門が何だって言うの!?」

「お前たちも理解しようとしなかった…だから知らねーんだよ」

鹿丸は言いながら4人を睨み付けた。

「鳴門の何を知らないって言うの!?」

「…」

鹿丸から言わせて貰えば、同じ年代で仲良くしていた仲間でありながら鳴門の事を全然解ってない事自体が腹立たしい…と。

話をしているとまた違う忍たちが集まって来た。

「…此の化け物め!!」

「やはり、生かしておくんじゃなかったな…」

「三代目がお前を庇っていたからこそ…其れも今日で終わりだ!」

「だから、そうやって化け物扱いする所が頭に来るって言ってんだよ俺は!
鳴が何したって言うんだ?」

殺気を込め先程の忍を睨み、鹿丸は続けた。

「お前らが今見てる鳴は九尾か…?違うだろ、渦巻鳴門だろ?」

「此奴は九尾の化け物だ」

「罪もない人を殺した、罪人だ」

其れを聞いた鹿丸は、ふん…と鼻で笑ってやった。

「罪も無い?罪人だ?俺からしてみりゃお前らのがよっぽど罪人に見えるぜ?」

「何だと…?」

「そうだろ?鳴を化け物扱いして、自分で付けた力を九尾だとか…。
一回でも、九尾の力は暴走したか?」

「其れはっ…」

鹿丸の言葉に対し、忍は口籠った。
其れもそう…今まで、九尾の力は暴走した事がない。
其れは鳴門が自分でコントロールしていたから。

「鹿、もういいよ…」

「鳴…」

「此奴らに何言ったって、無駄だろうから…」

そう言って鳴門は忍たちを見据えた。

「此奴らを殺った理由を教えてやる」

そう鳴門が言うと、其処にいる猪たちはゴクリと喉を鳴らした。

「今までずっと化け物扱いされても、何をされても我慢して…四代目を返せと言われても、そんなもん無理だし無視してた。
今回爺が死んだ事を此奴らは俺の所為にして来たんだ…俺の大切な人の死を自分の所為にされて頭に来たから殺った」

其処にいた忍たちは何も反論してこなかった。

「ま、一応俺と鹿は罪人だ。どうせ毎日つまんなかったし、里抜けたかったし。いい切っ掛けじゃん」

「爺のいない木の葉なんて面白くねーしな」

そう言って鳴門と鹿丸は刀を抜いた。

「止めたかったら止めれば?死にたかったら、の話だけど」

鹿丸はちらり、と4人を見、そう呟いた。

「「…」」

しかし、ショックが大きいのか4人は何も言う事はなかった…。

「…じゃーな」

そう言うと、鳴門と鹿丸は音もなく其の場から姿を消した…。

「逃がすなっ!!」

「何としても捕まえろ!!」








其の言葉が最後…。
多くの犠牲と共に、2人の忍は何処かへと去って行った…。









木の葉に背を向けて…

「今から何処行く?」

とても楽しそうな二人。

「…知らねーよ。んなもん、別に何処だっていいよ鹿となら」

「クス…嬉しい事言ってくれるねー」

「もう自由になったんだ…此れで空高くまで飛べたらもっと最高なんだけどな…」

「…羽はねーけど、大きく羽ばたこうぜ………2人で」





君と一緒に…。

ずっと…。



End...

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