洗礼と属性

 
ウィングに止められていた戦闘を、ゴンは翌日に取り付けた。

ゴン曰わく、負けるのは承知の上で試してみたいそうだ。

「死ぬような戦い方だけはするな」

「分かってる」

「…(本当に分かってんのか…?)」

新人で点数稼ぎしてる3人組の1人、ギドとか言う奴との対戦を俺と鹿丸とキルアの3人で観戦していた。

駒に念を込め、10体の駒を作り出し其れをステージへ投げやった。
其の駒はバラバラに動き、駒同士がぶつかり合い、ゴンへ飛んでいく。

「…いいように洗礼受けてるな」

「嗚呼。でも、此れで1つの経験にはなっただろ」

「鳴門たちはゴンが心配しねーのかよ!」

「心配した所でゴンの性格を変えられるとでも?」

「…其ら、そうだけど…」

「危なくなったら助けるさ」

どんなに頑固者だろうと、自分を危機に陥り楽しもうと、死ぬまでの危ない橋は流石にゴンも渡らないだろう。

「…ゴン!」

纏で気配を察知出来ないからか、ゴンは動きが鈍くなっていた。
ゴンの顔にうっすら焦りも見える。

さぁ、どうする?ゴン…。

場外に投げ出されたゴンは、ステージの外でまわってる駒を見つける。
ただ壁に何度も当たってるだけの駒。

そして、ゴンは駒を操る本体に攻撃を仕掛けようとするが、本体も駒のようにクルクルと回りだし全く攻撃が通用しない。

どうしたらあの駒を避けられて、戦っていられるか。そんな顔してる。

「バカ!ゴン!」

集中する為に、ゴンは目を閉じると纏を解き絶(ぜつ)状態になった。
より気配を感じられるようにって?

「念の攻撃を生身で受けたら!」

キルアが隣で大声を上げている。
其れも仕方ない。
纏で防御力を上げて最小限の怪我を防いでくれるものを、わざわざ其れなしで戦ってるから。

其れでもゴンは楽しんでいた。
1つ1つの駒の動きを察知し、其れを完璧に避けて…。












「右腕、とう骨、尺骨完全骨折!
上腕骨亀裂、肋骨3箇所完全骨折!
亀裂骨折が12箇所!全治4ヶ月だとさ…此のドアホ!!」

「ごめん…」

「俺に謝っても仕方ないだろ!」

ーコンコン…

「はーい…眼鏡兄さん」

「…ウィングさん、あの…」

咄嗟に腕で致命傷を避けたからよかったものを…。
其れでも、此奴は分かってない。

ーパシンッ!

「つ…」

「…鳴門?」

「鳴門くん…」

「(あー、怒ってるし…)」

「お前の其の身勝手な行動で何人ヒヤヒヤしたと思ってんの?」

俺と鹿丸は何時でも助ける準備は出来ていた。
死なないと確信したから助けなかったけど、其れでもヒヤヒヤはしてた。

「…ごめん、なさい…」

「戦いたいから纏を解いて、結果が此のザマか?いい身分だな…ハンターになって強くなりたいから此処来たってのに、ボロボロになって戦えもしねぇでどう強くなるって?え?」

「…なっ…る…」

「俺は怒ってんだからな…分かってんの?
此れだけの傷で済んでよかった、なんてお前は思ってんだろうが周りの気持ちも考えてみろ。
お前が死んだりしたら俺はミトさんに何て説明したらいいんだ!
ゴンが戦いたいからって、危険承知で向かって行ったんです…そう言えばいいのか?
って聞いてんのかテメェは!」

「鳴、殺気抑えろって。ゴン違う意味で死にそうだから」

俺の説教でかなり凹んでいたゴン。
ウィングも説教しに来たらしいが、俺が怒ってるのを見てあまり何人もの人間から怒られるのは当人が可哀想だと。
怒りが冷めたらしい。

「本当に、此れだけの傷で済んでよかったですね」

「う゛…ウィングさん…ごめんなさ」

「いいえ許しません!」

「う゛…」

怒りは冷めたんじゃなかったのか?
言葉にかなり棘があるけど。

「怪我が治るまで一切念を使う事を禁じます!観戦も行けませんからね!
もちろん戦うなんて論外ですから…」

そして、ウィングはゴンの左小指に布か何かを巻き付けた。

「誓いの糸です。此れを見て常に約束を忘れぬように」

ゴンがウィングとの約束の間、ピエロモドキが対戦する事となった。
もちろん、ゴンは見れない訳だから、俺ら3人で観戦しに。

カストロと言う男は実につまらなかった。
自分の力を過信し過ぎたのも敗因の1つなのだろう。絶対に負ける筈がないと。
其れでも両腕をくれてやったピエロモドキは奇術師らしく、見てて少しは面白かったけど。

「死んで当然だな」

「サラッと言うな」

「じゃあ、…」

「言い方変えても無駄だかんな!
ったく、お前らと一緒にいると常識が失われるっつーの…」

「何を言う。俺は常識の塊だぞ?」

「……」

何だ其の目は…。

「鳴門と鹿丸が常識人なら俺は何事にも驚きもしないし、突っ込まねーよ!」

其れもそうか…。

「其れにミケ手懐けといて、よく常識の塊だとか言うよな…」

「だって彼奴、俺の事上から目線で見てくるからさ。
ちょっとカチンときて。
鹿なんて殺そうとしたんだぜ?」

「Σはぁ?!」

「…鳴睨んでたから、つい」

「Σついじゃねーー!」













「「…」」

「お前…」

ゴンの部屋を訪れた俺たちは、驚愕した。

「あ!おはよー!」

逆立ちで出迎えたゴン…。

「怪我は…」

「もう治ったみたい!全然へーき!」

4ヶ月と言われた完治も、僅か1ヶ月で治してしまったゴンに俺は言葉が出なかった。

「お前変!絶対変!どうゆう体してんだよ!」

「ん、嗚呼此れ食べてたからかな?」

にぼし…。

「お前って奴は…」

「(なんて単純な体だ…)」

「えへへ☆」

「えへへじゃないっての。
ま、完治もしたし取り敢えず1勝目指してピエロモドキにプレート叩き返せ」

「うん!」

其れから俺たちは念の修行を再開させたんだ。
纏の応用技で凝(ぎょう)、オーラを目に集中させ、相手のオーラの色などを見る事が出来る。
絶の応用技で隠(いん)、オーラを見えにくくする事が出来る。

「(レベルが違い過ぎるっす…)」

其れを一晩でクリアしてみせた。
発(はつ)の修行へステップアップ。

「其れでは、自分がどの属性に適しているか調べてみましようか」

水見式(みずにしき)と呼ばれる、系統を調べ儀式。
グラス一杯に張った水の上に葉っぱを乗せ、練を行う。

ウィングがしてみせると、グラスの水が増え溢れ出す。

「私が強化系に属している事を示します」

ゴンも同じ強化系で、チロチロと水が零れ落ちる。
ズシは水の上に乗った葉っぱが動きを見せた。此れは操作系らしい。
キルアは何の変化もなかった。だが、ウィングの言葉通り水を舐めてみると、ほんのり甘かった。此れは変化系らしい。

「次は俺か…」

水見式をやってみれば、一瞬にして葉が枯れた。
そして、水が溢れ、葉はクルクル周り、不純物が混じり、水の色が変わっていた。

「…?」

「Σ此れは!」

「師範代!特質系の!」

「おい!水の色が!」

「…赤、くなってる?」

ウィングは其の水を舐めると…

「全属性に属している事を示しています…」

「「全属性!?」」

「師範代!そんな事があり得るんすか!?」

「特質系にだけ現れると言われる変化です…。葉が一瞬にして枯れた後、水の色、葉が動くなど全部の変化…。
私も初めて見ました」

まさか、九尾のチャクラが関係してるのか…?
普段のチャクラは青だけど、彼奴のは真っ赤だからな。
でも、俺のチャクラも同じくらいデカい筈だし…。

「珍しいんだ…」

「今までのハンターの中で此の属性はただ1人だけしか確認されていません。
其れ故、希少で殆どのハンターが此の属性を知りません。
此の属性を知っているのはハンター協会でもネテロ会長と其の周りの極一部です」

其の後、鹿丸も水見式をやってみれば、俺と同じ特質系だった。

「水見式での特質系を2人も…
しかも、全属性の変化も見れるとは思っていませんでした」

「ねぇウィングさん?
此の全属性って何て呼ばれてるの?」

「神の如く絶対的な力と様々なあらゆる属性の能力を使いこなす事から、神化(こうか)系とも呼ばれています」

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