「もしもーし、生きてるっスか!?」

「ん…………?」

体を揺さ振られた僕は、ゆっくりと目を開ける。
目の前には僕と同じくらいの子がいて、目を開けた僕に笑いかけた。

「此処、は…何処…?」

映り込む砂漠に目を丸くした。
さっきまで誰かと一緒だった筈なのに。
雨の中、傘をさして…。

「キミは、誰…?」

「ネル・トゥっス!ネルって呼んで下さい。で、誰なんスか?」

「僕?僕はね、…………………………………アレ…?」

自分の名前を言おうとしたら、

「どうしたんスか?」

「あのね、僕の名前が…」

――思い出せない…。

『思い出せ』

「…え?」

「??え??」

「今、誰かの声が、した…」

「誰もいないっスよ?」

『思い出せ』

まただ…思い出せって、何を思い出したらいいの?

『お前の、本当の名を…』

僕、の…本当の、名前…?

僕は頭の中から聞こえてくる其の声が、何故か懐かしく思えた。
何時か、何処かで聞いた事のあるような…そんな懐かしさ。

『思い出すのだ、我が主よ』

其れを聞いた瞬間、僕はゆっくりと口を開いた。

「セルフィ・ラ・カルト…あれ…何で…?」

「?変な名前っスね…」

「違うんだ!僕の本当の名前は、………………アレ…セルフィ…」

「んん?」

『そうだ、其の名こそ我が主の名前。やっと、此の数百年、お待ち申していました「我が主よ」』

フワリ、と上から降りてきた知らない顔…。

黒ずくめのマントを羽織、黒いサングラスをした、人…。

其の声といい、姿といい。
懐かしく思えるのは何故なんだろうか…。

「我が名を、呼んで下さいませ、セルフィさま」

「名前………………………ざ、斬月(ざんげつ)…」

どうして名前が言えたか分からない。

頭に浮かび上がってきたんだ。
此の人の名前が…。

「はい、セルフィさま」

男はふわりと微笑んだ。

僕は、知ってる…?
僕の事を此の人は知ってる…。
僕は誰…?
アナタは誰…?

何故、懐かしいと思うんだろう。
其れはまだ分からない…。

「セルフィさま、皆がお待ちですよ」

「皆…?」

皆って、僕を知ってるの?

「はい。ネルもついて来るんだ」

「オラ、も…?」

僕もネルも訳が分からなくて首を傾げていたら、斬月に抱き抱えれた。

「ね、ネルも抱っこしてあげて?」

「セルフィさまのお申し付けとあらば」

ニコリと笑って斬月は、ネルを抱え上げた。

すると、一瞬にして砂漠から景色がガラリと変わったんだ…。

「此処は…?」

「セルフィさまをお待ちになられている方々がおられる部屋です」

何処かのお城のような場所の中に入ってきたみたいで、目の前には大きな扉。

斬月は僕とネルを下に下ろし、其の扉を開けた。

ギィイイ…

何だか怖くて、僕は斬月のズボンの裾をギュウと握った。

「大丈夫ですよセルフィさま。
皆貴方さまが来られるのをずっと待っていたのですから」

「ネ、ネルは何で呼ばれたんスか…?」

「セルフィさまの遊び相手として、セルフィさまの傍に仕える為だ」

ゆっくりと扉が開いていく。

「さぁ、セルフィさま」

背中を押され、ゆっくりと歩いていく。

「斬月…」

後ろを振り返り、両手を斬月に向けた。

「クス、どうかなさいましたか?」

笑って僕をさっきみたいに抱き上げてくれて、僕は斬月にしがみついた。

「……怖い…」

部屋の中に入ってみたら分かるんだ。
10人くらいの白い服を着てる人たちが集まっていて、じっと、僕を見つめる其の視線が怖かった…。

「大丈夫ですよセルフィさま、皆貴方さまの仲間です」

「…な、か、ま…?」

「はい」

こんなに大きい人たちが、仲間…。

「セルフィさま」

「………?」

1人の男の人が僕に近付いてきた。

其の人はニコリと笑い、僕に頭を下げた。

「我が王、戻られる日を今か今かと…。私の名は藍染 惣右介、惣右介とお呼び下さい」

「そー、すけ?」

「はい」

「僕は市丸 ギン言います。ギンて呼んでな」

「ギン…」

「私は東仙 要と申します。要とお呼び下さい」

「カナメ…」

其れから他の人の名前も聞いた。

皆、僕の仲間…。

「仲間…?そーすけは僕の仲間?」

「はい」

「ギンも?」

「そやでv」

「カナメも?」

「はい」

「皆、も?」

そう僕が言うと、他の皆も笑って頷いてくれた。

「…仲間!!ネルも仲間!斬月も仲間!」

僕はニッコリと笑った。

仲間って言葉が何となく嬉しかった…。
此処に来た時から前の記憶がなかったから不安で仕方なかったけど、皆が、仲間がいるから、大丈夫な気がする!

「皆、仲間…!!」


















 

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