僕はただ愛されたいだけ | ナノ




「おはよう、七々瀬君」




栗色の真っ直ぐな髪の毛が
空いている窓からの風で戦ぐ
本当に整った顔をしていると思う。
朝から学校に来たらしい
秋葉優。不登校児。
しかし周りからは中傷されるような事はなく
彼が来たことに皆喜びを感じているようだった。




「(人気者、か)」
周りから愛される秋葉優
俺と何が違うのだろう
顔か、性格か、家柄か…?
俺は日々、少しながら頑張っている
だから友達がいる、だから声をかけられる
彼は学年が変わって初めてここに来たというのに
何もしていないのに、居るだけで周りが彼に寄ってくる。




「(嫌な気分だ)」
俺は秋葉に笑顔でおはよう、と返して新田の席に向かった。
「おはよ、七々瀬。俺秋葉の顔初めて見たけどマジ整ってんな」
「…そうだな」
ここでも、彼が興味を寄せるのは秋葉だった。
「っま、俺達みたいのは程々でいいんだよな」
俺は新田の笑った顔、好きだよ。なんて言いそうになってやめた。
大きな口に細長い目、俺は新田のこと普通にかっこいいと思うし、好きだ
いや、別に恋愛とか…そーゆーのではないのけれど。




「なぁ七々瀬今日お前んち行っていい?」
「いいけど、彼女はいいの?」
「いーんだよ!…別れたし」
「・・・そ、汚いけどいいよね」
そっけなく、返事をした。
心はだいぶ動揺していた。
「暫く女はいいや〜」
「・・・」
嬉しかった。きっと暫くは…俺を優先してくれる。
俺の、親友





「俺も七々瀬君の家、行ってみたいな」
「!?」




また、こいつは
不意打ちは2度目だ。
「え、秋葉も七々瀬んち行きたいの?」
「うん、俺七々瀬君のこと好きだから」
「ちょっ」
周りがざわつくのを感じた。
勘弁してくれ、そんな注目は浴びたくない。






「昨日、たまたま教室であっただけ、だから」
…すこし、大きな声をだしてしまった。
「すげーじゃん、秋葉と友達」
「え?」
新田の言葉に、少し固まった。
凄い?俺が?何で???



ザワザワ、ザワザワ
ああ、俺の周りに…人が集まる



「俺は七々瀬君の為に学校来たんだからね」
「キモい事、言うなっつの」
後ろから抱きつかれた手を叩いた。
女子が何だか喜んでいる、意味は分からないけれど
悪い気がしないのは真実で
多分俺は人気者に好かれてる事に浸っていたのだと思う。






―――…





「七々瀬君、新田君今日バイトあるの忘れてたんだって」
おっちょこちょいだねぇ




なんて、何笑って言ってんの
「…じゃあ今日の約束は無かった事って事で」
「は?なんで?俺は行くよ?」
2人は嫌だ。絶対こいつと間もたないし
「(つーか俺こいつに昨日キスされたよな)」
「…嬉しかったくせに」
「?!」
スルリと、手の甲を指で撫でられた。




「俺に好かれて」
秋葉の声が
「周りに羨ましがられて」
妙に頭の奥に入ってきて
「優越感に浸ってたくせに」
危険だ、絶対に
「そんな七々瀬君も俺は好きだけどね?」
「(深入りしちゃいけない)」




「七々瀬君は人の好意が気持ちいいんでしょう?」
腰を掴まれて、ビクリと体がはねた。





「(なんで、こんなに)」
昨日初めてあった男に見透かされているのだろう。
恥ずかしい、みっともない
でも、全部合っていた。
「俺があげるよ。君欲しい物。」
手を握られた。離して欲しい筈なのに
人通りの少ない道だからまあ良いか、なんて
そんな風に思ってしまった。





「へぇー、ここが七々瀬君の家か、親御さんに挨拶しないとね」
「ひとり暮らしだから」
「そうなの?俺と2人でいいの?」
「・・・」
何をするわけでも、ないだろ…??
怖いこと言ってんじゃねーよ…





大きくも小さくもないマンション
秋葉は嬉しそうに笑っていた。
俺は少し後悔した


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