nearly equal

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winter flower 1



花火を見にいこうと誘われた。

年が明けた瞬間打ち上げられる花火は、確かにここ数年見に行っていない。以前はよく兄弟で見に行っていたけれど。

大学に入って交遊範囲の広がった弟が年末年始やイベント時期を家で過ごす回数は減り、ひとりではわざわざ寒空の下で震えながら新年を迎える気にはなれず、エドワードは自宅でひとりで年を越す事が多くなっていた。

「友達と行って来いよ。オレ、家で紅白観てるし」

久しぶりにアルフォンスと花火を見に行くのは魅力的だった。ましてやエドワードは行ける範囲で行われる花火大会には全て足を運ぶ程花火が好きだ。
でも断って友人と行く事を勧めたのは、先日のクリスマスの二日間を、アルフォンスが自宅外で過ごしたから。

いつかそんな日が来るとは思っていたけれど、遂にアルフォンスにも彼女が出来たんだ……そう思うと、兄弟離れしていく弟の成長が嬉しくもあり、少し寂しくもあった。

今迄ずっと、楽しい時間はふたりで分け合うように一緒に過ごしてきた。それは兄弟だけに許された特権だと思っていたけれど、その特権もそろそろ他の誰かに譲らなくてはならない時期になっただけの事。アルフォンスは十九歳、エドワードは二十歳になった。

「じゃあ僕も紅白見るよ」
「え、だから友達と行けよ…暖かい格好してさ。お前、バイト忙しくて夏の花火も見れなかったじゃん。行って来ればいいのに」

彼女と…と言えないのは、彼女の存在を認めたくない、恋人の居ない兄貴のプライドなのか、それとも弟を取られたと思ってしまう、稚拙なヤキモチなのか。

「兄さんと行きたいんだ。兄さんが行かないなら、僕も行かない」
「なんだよ、それ……」

膨れて見せても内心嬉しかった。まだ兄弟の特権は生きているらしい。それをアルフォンスが特権と思って特別に考えていてくれるかどうかは解らなかったけれど。



「……じゃ、行く…」
「うん、行こう」

少し考え過ぎて、もしかしたら花火を見に行ったそこで彼女を紹介されるかもしれない、とまで思った。

その時はその時で、邪魔者はさっさと退散してウチに帰って飲み明かそう。きっとアルフォンスは帰ってこないだろうから、昔の思い出を肴にひとりでしみじみ呑んでやるのもいいな、と考えた。
少しばかり鼻の奥がツンと切なくなったけれど、それはそれで楽しい年越しになるかも知れない。

「楽しみだなぁ」

無邪気な笑顔を見せるアルフォンスにエドワードも苦笑する。

あとどれくらい、こうしてふたり、笑う事を許されるだろうか。
兄弟離れの時期はすぐそこまで来ているのかもしれない。そう思うと、今年最後の花火はしっかりと胸に焼き付けておかなくてはならない気がした。






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