少女が壊れた日

そのお姫さまは、その国の姫ということに誇りを持っていました。
優しくて素敵な兄、姉、弟。頼りになる城の人たち。みんなに愛されることを望み、彼女自身もみんなを愛していました。
少女は、いつか素敵な王子さまが迎えに来てくれるという夢を抱きながら幸せな毎日を過ごしていました。
「あの日」までは。

彼女にはずっと不思議に思っていることがありました。お城から出ることを禁じられていたのです。その理由を尋ねても「まだ姫さまには早いです。」の一点張りでした。
「教えてもらえなければ自分で調べたらいいんだよね。」少女は真っ直ぐな瞳で1人呟くとお城の資料室に足を向けました。

誰にも見つからないように息を潜めながら求める本を探します。そしてついに見つけると、少女は駆け足の鼓動を抑えるように息を吐き、埃のかぶった本を開きました。
「……え?」
そこには、自国が「罪の国」と呼ばれていること、そして昔犯した「罪」が細かく書かれていました。
「あ……え……いや……。」
文字を追うにつれて、少女は今までの世界が、自分の夢が、真っ黒に塗りつぶされているように感じました。
「こんな、ひどいこと……してた国だなんて。」
がたがたと震える肩を細く白い自分の腕で抱きますが、なんの支えにもなりません。小さい手に力が入りますが、それでも安心感とは遠いものでした。
「こんなの……王子さまなんて……愛してなんて……もらえない……。」
ぽたぽたと涙が床に落ちると、彼女は本を勢いよく掴んで投げ捨てました。
「しあわせになんてなれないじゃない!!!」
そう叫ぶと大きな足音を立てながら部屋を出て行きました。
泣き喚きながら走る少女に誰もが振り向きましたが、彼女は足を止めずに自分の部屋に駆け込みました。
泣き喚き、部屋のものを片っ端から投げていると、城の人たちが彼女の部屋の前で心配そうな声をかけました。
「……暴れたら、みんな心配して……愛してくれるんだ。」
ぐわんぐわんと揺れる思考の中で、ふとそんな考えが浮かびました。
「あたし、愛されるためにがんばるからね。」
彼女は鏡に映った泣き顔に脆い笑顔を向けてそう言うと再び泣き叫び出しました。

【少女の壊れた日】



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