好きと言って | ナノ

厳しさと優しさ

「やり直せ」
「ええっ!またですか!?」
「それはこちらの台詞だ」

ウェスカーは冷たく言い放つとアリスをデスクから追い払うように、自分のパソコンへと視線を落とした。
何度目か報告書の返却にアリスは半べそをかきながら、戻っていく。

「アリス、大丈夫?」
「ありがとうジル、頑張るね」

どこをどう直せと言ってくれないウェスカーが悪いとクリスもフォローを入れてくれ、アリスは苦笑した。
彼女はいつもそうだった。このS.T.A.R.S.に入る前から、頑張り屋で努力家なのだが、どこかが抜けていると言われてきた。だからこそ、自分に何か欠点があるのだと思っていた。

「完璧にして、隊長に認めてもらうんだから!」

そう意気込んだアリスにジルは微笑みかけてから自分の仕事へと戻った。
ここのメンバーは後輩である彼女に対して優しかった。何かとフォローもしてくれるし、何より頑張りを認めてくれていた。ただ一人を除いて。

「ウェスカーもアリスに厳しいよな……まあ、全員にか」

そう、自分にも他人にも厳しいウェスカーだけは、アリスを甘やかしたりはしてくれない。
むしろ彼は周りから可愛いがられている彼女に余計厳しく接していた。真意は分からないが、隊長である立場上アリスがこのままではいけないと考えてのことだろうか。
自分がもっと仕事の出来る女なら、どれだけ良かっただろうとアリスは思った。周りにも気を使わせないし、隊長も怒らなくて済む。

「隊長も大変だよね」
「…そう思うなら、仕事を増やさないでくれ」

いつの間にか後ろを通りかかったウェスカーにピシャリと言われ、すみません!と一言言うと彼女はまた報告書との格闘に挑んでいった。



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S.T.A.R.S.時代好き。
楽しく行きましょう、なるべくw
140901

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