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入学式の後、何やら友達ができた。隣に座ったドラ子とかいうデコが自慢話ばかりしてくるので適当に相づちを打ちながら全部無視していたら、なにやら話を聞いてくれた事に感動したらしく親友宣言をされていた。
どんだけ友達いなかったんだ。もしかしたら寂しい奴なのかも知れない。変な名前のせいでいじめられたりしたのかもしれない。話はうざかったけど。

その後純潔とかなんとか聞いてきたから、最近の子はませてるなぁとか思いながらお茶を濁しておいた。
二十を超えた大の大人であった“私”はまぁ、それなりにお付き合いやらもろもろの経験やらはあるが、11歳というぴちぴちの今の身体では何と言ったら良いのか分からん。しかし彼の純情とか思春期特有の夢見るなんかを壊しても申し訳ない。

そうすれば彼は良いように勝手に解釈したらしく、にこにことしていた。なんだこの罪悪感。その後小鳥の雛のように後ろをくっついてきたが、ドラ子が移動すると後ろに居るゴリラ2匹も着いてこようとするので非常に鬱陶しい。しかも視線が痛い。
どうやら彼の中で私はちょっと照れ屋な子というポジションについたらしく、なにかと気にかけてくる。なんかお母さんみたいだった。
ドラ子自体はなんか昔のリザードンのようだ。てこてこと私の後ろを着いてきていたリザードンは今も昔もおかん気質だ。

ダンブルドア校長が何やら入ってはいけないという区域のことを言っていたが、ドラ子はうるさいわグリフィンドールの輩は大騒ぎするわで正直あまり聞こえなかった。
しかし好奇心旺盛な年頃の生徒達に何があるのかも教えずにただ闇雲に禁止するのは賛成できない。
何があるのか分かっていればわざわざ危険を冒すような馬鹿も減るだろうし、度胸試しに使われるくらいの確率になるだろう。それでも子供は子供なりに己の実力を分かっている。無茶はしない。

しかしダンブルドアの言い方では逆効果だ。痛い死に方をしたくない者は、といっても死などという非日常なものに関して、子供の認識は低い。
(まぁ私はあえて近づく気はないけど)
でも何かを隠していることは分かる。何か、重大なものを。もしそれが向こうの世界に帰るために必要なものだとすれば、問答無用で私は行くだろう。私は魔法など使えないから、もちろん入念に下調べをし、確実に勝てると踏んだ場合のみだけれども。
ポケモンセンターもショップもないこの場所で、大切な仲間達に怪我をさせる訳にはいかない。

まあ禁じられたところで森には行くが。薬草やその他もろもろの用意に役立ちそうなものは多かった。こちらに来たときに通過した森の為、まだ例の‘痛い死に方’をするとやらの場所よりかは安全性が高い。


「とりあえず土とプランター用意したいんだけど」

「…木の実か?」

「ポケセンもないし、傷薬とかも数に限りがあるしね」


部屋に帰るな発した第一声に、ダークライがこともなげに応えた。さすがである。


「うん、別にプランターじゃなくても、室内で土盛れるんであれば別に鍋とかでもいいし」


うまくいけば復活草等も育てられる。あまりおおっぴらにされたはいないが、植物系統のものであれば育つ可能性は高い。あまり使いたいタイプの道具ではないけれど。
手持ちに草タイプがいない事が少し悔やまれる。
草タイプの子達は結構な確率で植物の世話をしたがる。いやもしかしたら私のポケモン達だけかもしれない。向こうの世界でのんびり暮らしているであろうポケモン達を思い出し、少し切なくなった。


「あんまり毒消しとかのストックがないから、まず木の実量産が目標です。とりあえず何か入れ物。土は明日にでも森に行って調達するから」

「分かった」


会った人間へのダークホールの使用は許可するから、といえば彼は少し好戦的に笑った。あらやだ怖い。影から影へと移動できるダークライに物資の調達は任せ、他のポケモン達をボールから出す。
厨房から届いている食材はキッチンの方で山積みになっていた。とりあえず今からすることは彼らの食事作りだ。あとこってりしすぎてあんまり食べられなかった自分の分の食事も。

明日の夜は森に行く。ついでにそろそろ本格的にリオルのトレーニングもしなきゃなぁとやることの多さにげんなりとした。
リオルはまだ戦闘経験がない。このままこの世界に居続けるならば一人でも戦える様に強くならねば、恐らくはリオル自身の危険に繋がる。
あとちょっと最近言うこと聞かずにテンション高い時が多いリオルくんをどうにかしなきゃなと。




120920
ふっかつそう(本文では復活草で表記)…瀕死状態のポケモンを全回復する道具。しかし漢方薬の中でもなつき度の低下が一番大きい(=めっちゃ苦い)

主人公のポケモン達は基本的に絶対服従を誓っている為、フリーダムなリオル君がちょっと不思議に見えた主人公でした。多分子供と大人の年の差が生み出すテンションの差。


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