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真実を知らなければ流されてしまいそうなほど、ダンブルドアの言葉は優しく甘い響きを持っていた。其れは大きく口を開いたまま獲物を待ち続ける花の様な、不気味な、あがらい難い蜜の様な。

(言葉自体に魔法でも掛けてんのこのじいさん)

言霊、といった言葉もある。あながち間違ってはいないのだろう。その言葉に思わず引き込まれそうになる己に苦笑する。事実、一種の催眠効果の様なものでも含まれているのかもしれなかった。

ただ真実を知っている者にとっては。
それはただの滑稽な、うすっぺらい茶番にしか見えない。

(それも子供の心の闇につけ込む最悪な茶番だわこれ)


「その力は異端ではない。確かに儂らでもあまり見た事はない珍しいものではあるが、同じ魔力からきている事は間違いないのじゃ。己を誇りなさい」


よくもまぁ、今まで散々異端である事に傷ついてきたであろう子供に向かって異端異端とぽんぽんいえたものである。しかも魔法学校の校長までもがあまり見た事はないイコールそれはつまり生徒レベルであれば見たことも聞いたこともないと言っている様なものだ。
誇るも糞も、確実にいじめフラグが立ちまくっているようにしか私には感じないのだけれども。


「異端、じゃ、ない…(明らかに異端でしょうよ…)」


ダークライが後ろ可笑しげに笑っているのが分かった。他のポケモンたちもボールの中で笑いをこらえている。人事だと思っておもいっきり楽しんでいるのが丸分かりである。特にリザードン。

どうしたものかと。正直ここで面倒を見てもらえるとこの世界を全く知らない自分には非常に助かる。しかし目の前の男のいう事に従うのもそれはそれで癪だった。学費免除、生活費支給、全寮制食事つき。学ぶ事はここで過ごすうえで必要なことであるし、別段苦ではない。非常に好物件である。
ただ問題があるとすれば人間関係か、散々言われている魔法とやらを使えない事か。しばし考え、


「ありがとう、ございます」


金>感情。
世の中そんなもんよ。


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