18

ソファーに腰かけ、紅茶に口をつけたカルムに、ダンブルドアは覚悟を決め重い口を開いた。初めて魔法という物を間近で見て、年相応に楽しそうに、興味深そうにする彼女を、もしかすれば誰よりも己が傷つける事になるかもしれないと。


「君が今まで何を感じながら生きてきたのかは儂らには想像することしかできない」


それを聞いたカルムの動きがぴくりと止まる。先ほどまでの楽しげな雰囲気は消え、重苦しい沈黙が戻った。


「…そうですか」


じゃが、とダンブルドアは続ける。目の前にいる子供の目をみつめ、一つ一つ噛みしめるように、言葉を紡ぐ。心は既に血にまみれ、今更何を言っても何の効果もないと分かってがらも。
マグルの中で苦しんできたであろうこの子供に何故もっと早く気付いてやれなかったのかと己の不甲斐なさに唇を噛みしめる。


「…それで、私はここに保護されたたと」


目の前の子供の目は冷めきっている。この学校にいる同年代の子供達には感じられないその眼差しに。


「保護、という言葉は少し違う。君はここで己の力を制御する為の術を学ばなければならないのじゃよ」

「……己の力、」

「君の力は恐らく…いや、確実に魔力じゃよ。君は今まで魔法というものを見たことがないと言っていたね」

「はい、」


カルムが静かに応えれば、彼女の後ろにある影が僅かにざわめく。それを見て、ダンブルドアはカルムの後ろに控えていたスネイプに目配せをする。通常の魔法より主の感情に大きく左右されるらしいカルムの魔法は、己にとっても彼女にとっても非常に厄介でるとダンブルドアは未だざわめく気配を感じる陰に目を落とした。
この年でこの落ち着きは、彼女なりの力の抑制方法であるのだ。それは悲しくも、大きな脅威にも感じた。


「その力は異端ではない。確かに儂らでもあまり見た事はない珍しいものではあるが、同じ魔力からきている事は間違いないのじゃ。己を誇りなさい」

「異端、じゃ、ない…」


そう聞こえるか聞こえないかのように言ったカルムが僅かに震えて見えたのは間違いではないのだろう。恐らくは無意識にでたのであろうそれに己の考えは間違ってはいなかったのだと確信する。
あてがないのなら学費や生活も面倒を見る事を辞さないと、一番の問題であろう事を伝えれば、カルムは少し目を見開いた後、深々と頭を下げた。


「…ありがとう、ございます」


しかしそういった子供の瞳から、冷めきった何かが消える事はなかった事にダンブルドアは気付かないふりをし、スネイプは僅かに目を細めた。



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温度差ェ…




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