▼医者がこい



虚がいると報告を受けた場所に着くともうすでにその場ににそれはおらず、それどころか気配すらも感じられなかった。

どこも壊された様子すらなく、間違いではなかったのかと眉をひそめる。隊長格である自分が指名されたと云うことは、それ相応の敵が現れたと思っていただけに軽く拍子抜けする。

仕方なく、戻ろうと辺りを見回せば、地獄蝶が


足元で、死んでいた。


嫌な予感がした。
何度か門を開こうと試みたが、全く反応がない。


「どうなっている・・?」


訳が分からないまま、とりあえずと強い霊圧を感じる方へと足を進める。

いつもと変わらない様に見える現世。
しかし何かがおかしいと直感が告げている。


いくつかの家を通り抜けた所で、突然霊圧が霧散した。
自分の置かれた状況を整理しようと、思考を働かせたっころで、

ぞわり、と

体の奥から熱い物がはいあがる。
慣れ親しんだ感覚。
何も今、とも思ったが、こればかりはどうしようもない。
子供の頃から何度も経験してきたソレに、恐怖よりも焦りが、焦りよりも諦めが浮かぶ。
ここのところ、発作がなかった為少し無理をしてきた事が一気に出たのかもしれない。


(相変わらず、間の悪いー・・・)


息が詰まる。
喉がヒューヒューと音をたて、酸素が肺に正確に送り込まれない。
口の中に血の味が広がった。ぼんやりと滲む世界。急激に支える力を失う身体。
今度の発作は、何時もよりかなり酷いものであるらしかった。





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