1 人生初
「ちょっとっくらいいーじゃんか」
『嫌ですっ!!』
「ちょっと喋ろうよ」
『いや……っ!!』
係の仕事で帰りが遅くなってしまった。
早く帰らなければ親に叱られる、と思って、家までの近道になる薄暗い路地裏を通ったのがいけなかったんだ。
「俺達いい所知ってっからさ」
『っ、放してよっ!!』
ガラの悪い、俗に言う"不良"に、私は人生初 絡まれてしまったのだ。
掴まれた左腕が痛い。
こういう時は"大声を出せ"って言うけど、体中震えて体に力が入らない。
誰かいないの……っ?!!
――その時だった。
「面白い事してんじゃねぇか」
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