10 風の吹き回し
「神崎」
『うぇっ!?』
変な声を出した私に怪訝そうな顔をする柳くん。
……あの出来事の次の日だ。
キスされたのは"蓮一"であって、柳くんではないのだけれど、やはり柳くんを見ると昨日の事を意識してしまう。
だから今日柳くんには会わないようにしよう!!
と決意した直後のことだった。
廊下で柳くんに声をかけられたのだ。
そして冒頭に戻る。
「すまない。驚かせてしまったようだな」
『い、いやっ!? 別にっ!?』
できるだけいつも通りに接しようと思ったが 私には難しいらしい。
『な、何か用が?』
「いや、特には無いが」
だったら声をかけるな!!「少し様子がおかしかったのでな。気になったんだ」
『え、』
気になった……?
『……どうして?』
「どうして、というと?」
『"気になった"ってだけで自分から女の子に声かけるなんて、一体どんな風の吹き回し?』
「……ほぅ」
柳くんが関心したように口角をあげてニヤリと笑った。
『……柳くん?』
「随分と口が達者になったものだな、陽毬?」
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