2 一匹の狼
すぐに逃げようとしたら、ハッハッハッと荒い息が聞こえた。
恐る恐る振り向いて狼を見ると、狼が倒れている所に赤い液体が見えた。
――
血だ。
狼に食われた動物の血…?
ハッハッという息がどんどん辛いものになっていく。
――
違うこの狼の血だ。
よく見ると。狼の左腕に大きな傷があった。
そこから血が流れ出していて……
――このままじゃ死んじゃう……!!
私は鞄の中から大きめのハンカチを取り出した。
『……お、起きてますかー……』
狼に人間の言葉なんてわかるはずないけど、一応聞いてみる。
しかし狼はハッハッと辛い息をするだけ。
――こんなに弱ってるなら、襲わないよね。
私は狼の左腕の傷の所にハンカチをきつく巻いた。
……血、止まったかな…。
いつの間にか狼の息はスースーという心地好い眠りの息に変わっていて。
もう大丈夫かな。
『……ちゃんと怪我治して家に帰りなよ』
私は一匹の怪我をした狼を残し、家路に急いだ。
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