1 困った体質
私の名前は永島歩海。
突然だが、私には好きな人がいる。
スチャッスチャッスチャッ
そう。
今 隣の席で高速ペン回しをしている彼――忍足謙也。
ちなみに上部の"スチャッ"という音はペンが一回転したのを取る音だ。
早過ぎてどうやって回しているのかは誰も知らない。
回しているのかも定かではない。
まあそんなことはどうでもよくて。
私が好きになったのはもちろん 彼が高速でペン回しをするからではない。
彼の"明るさ"に惚れたのだ。
どうしてかというと私は――
ドンッ(←私が誰かとぶつかる音)
ベシャッ(←私が転ぶ音)
『……』
「……あっ!? ごめん永島さん!! いたの!?」
『………』
この通り、私には"存在感"と"明るさ"というものが欠如しているのだ。
そんな私と正反対な彼だからこそ、私は彼に惚れたのだと思う。
まあ、私が彼と付き合うなんて、ましてや話すなんてことは今後一切無いだろうけど。
……私のこの想いは中学時代の良い思い出としてとっておくんだ。
『……うん……気にしないで……(いってーわ こんのドアホ!!!)』
いつもの学校帰り。
人混みを歩くと存在感のない私に人々がぶつかったりして怪我をするので(主に私が)、
人がいない、河原という近道を歩いていた。
川の流れる音が心地好い。
そして周りには誰もいないという占領感。
なんて幸せなの……
うふふ、と心の中で笑いながら(端から見れば無表情である)歩いていると、
橋の下の薄暗い所に何かがいるのが見えた。
一瞬人が寝転んでいるのかと思ったが、違う。
いずれにしてもそこを通るか、土手を登るかしないと家に帰れないので、土手を登る気力がなかった私はその"何か"の横を通ることにした。
少しずつ近づく。
……やはり人間じゃない。
もっと…全身毛深くて…
犬のような耳と鼻を持っていて…
ふさふさの尾がついていて…
……。
『
!!!??!?!?』
狼…!!
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