暁の空へ | ナノ


  62 帰らねば


バス時間まで少し時間があったので、光が休憩に入る時間を狙ってメールを送った。

光はメールを見た後、慌ててこっちを見てきた。
バチッと目が合う。


ごめんね、光……
バイバイ、と手を振る。


すると光から電話がかかってきた。


《有梨先輩、帰っちゃうんスか?》
「うん、ちょっと……」


……仁王の為に帰るって言ったら、納得しないだろうなぁ。


「家族が高熱出してぶっ倒れちゃったらしくてさー」
《そうなんスか……そりゃあ、仕方ないっスね》
「うん……本当、ごめんね」
《いや、いいんスよ。有梨先輩とはちゃんと会えたし》


フ、と光が微笑むのが見えた。

思わず熱くなった顔を手で覆った。


《先輩?》
「光……アンタがモテる理由、私にはよくわかったよ……」
《は?》
「い、いや、何でもない」


ふと腕時計を見る。
そろそろ行くか。


「じゃあ、そろそろバス来る時間だから、行くね」
《っス……じゃあ、また時間が合った時に》
「うん、またね」


バイバイと手を振る。
光は他の人に気づかれないように手を振った。

電話を切って、屋内テニスコートを出る。


そういえばせっかく氷帝来たのに、氷帝の人とは一切絡まなかったな……

まぁ、それが 私が"モブ"だってことの証明なんだけど。
平和平和。


氷帝学園前のバス停に着くと、すぐにバスが来た。
整理券を取って、バスの階段を上がる。




《ドアが閉まります。ご注意下さい》






その時だった。








有梨っっ!!!!









「え……」







シャーっと音をたててバスのドアが閉まり、バスが動き出す。








ガラス越しに目が合った、私の名前を呼んだのは……


















「宍、戸……?」

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