暁の空へ | ナノ


  60 緊急事態


《あれ? 声だけでよくわかったね》


フフ、と電話の向こうで幸村くんが笑う。

そりゃあ貴方の声(正確には中の人の声)は声真似するために何回も聞きましたから!

……と、その前に確認しなければいけないことが1つ。


「幸村くん……私、電話番号教えたっけ?
《え? ああ、丸豚……おっと。丸井から携帯奪った時に見たんだ》
「丸豚……おっと。丸井くんにも教えてないけど!?
《だんだん丸井の扱いが雑になってきたね》


お ま え も な


てか本当に丸井くんにも教えてないよ?

仁王から洩れた?

立海テニス部怖っ


「で、何かご用でしょうか」
《ああ、今すぐ神奈川に戻って欲しいんだ》


……。


何故私が県外にいると!?!?
《氷帝にいるんでしょ? それくらいわかるよ》


魔王だから《え?
イエ何でもありません!!


「何かあったの?」
《ああ、仁王が練習中に熱出してぶっ倒れちゃってさ。仁王のご両親今週いないみたいで、仁王の看病する人がいないんだ》
「で、私?」
《そう。家隣でしょ? しかもだだっ広い家に一人暮らしだし。一晩くらい仁王おいてやってよ》


ふむふむ
なるほどー


「って男と女が一つ屋根の下で一晩過ごせと!?!?
《そうだけど?》


こいつサラっと言いやがった!


《大丈夫だよ。仁王はかなりの高熱で意識朦朧だし。有梨は色気無いし》
正直に言わないで下さい


私だって傷つくこともあるんだよ。女の子だもん。
何で電話でダメージくらわなきゃいけないんだ。

でも仁王は心配だな……


「……わかった。すぐ帰る」

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