38 成り代わり
「ななななななんで忍足謙也が木陰でトリップの世界にテニプリしちゃってんのさ!!」
《
落ち着け。いや、俺もようわからんのやけど……気が付いたら"忍足謙也"に成り代わってたんや》
「成り、代わり……?」
《身体は忍足謙也やけど、中身は”あっちの世界”でよくお前と2人で生放送してた”木陰”なんや》
「ああ、うん……でも……」
……この人本当に木陰?
何か違和感……
《でも?》
「何で関西弁なの?」
《あー……普通に喋ろうとすると関西弁になんねん。何せ俺は"忍足謙也"やからな》
「大変なんだね」
《まぁでも、たまに"木陰"に戻る時もあるねん》
"木陰"に戻る……?
「どんな時に?」
《……俺、成り代わる直前のこと覚えとらんくて……どうやって"あっちの世界"の"木陰"が"忍足謙也"になったのか……わからへんねや》
「……」
どうやってこっちの世界に来た……?
そんなの、考えたことも無かった。
いつの間にかこの世界に来ていて……
……私、この世界に来る直前……何してた?
もとの世界の私はどうなったの……?
覚えてないのは何故……?
《でもたまに思い出すことがあるねん。そん時に標準語になったりして"忍足謙也"が"木陰"に沈む》
思い出す……?
何を……?
《夕月?》
「……木陰は多分、"忍足謙也"に成り代わったから、少しずつ思い出せるんだよ……」
《え?》
「私は、"私のまま"この世界に来たんだ」
《そうなんか》
よくある夢小説の展開だ。
「私……前の世界のこと思い出したら……
――
この世界から、いなくなるのかも」
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