暁の空へ | ナノ


  1 トリップ


きっかけは"テニスの王子様"という漫画だった。

私は"テニスの王子様"が大好きだった。


原作は全巻、そしてファンブック、ゲームも買い、同人誌も買ったし、コスプレだってした。
声真似レパートリーも今では30キャラを越える。


同じくらいハマっていたのが"ニマニマ動画"

私は歌い手として活動していた。



そんなオタクの私に、ある日とんでもなく非現実的な事が起こったのだ。













ピピピピ……ピピピピ……


朝、目覚ましが鳴り、いつも通りに起きた。

うーん、と唸りながら目覚ましを止め、目を開ける。
すると、視界に何か"違和感"があった。


……あれ? 私の部屋、こんなんだっけ?


そう思って、辺りを見渡す。


「え?」


必死になって全巻集めた"テニスの王子様"が、本棚にない。

飾っておいたコスプレグッズも、ない。


――いや、ひとつだけ残っていた。
立海大附属中の女子制服。


「なんで?」


お父さんかお母さんが捨てちゃったのか?

そう思って見慣れない家を歩き回るが、誰もいない。

その時、外から声がした。


「おっはよー仁王!」
「あ? なんじゃブンちゃんか…」


まさか、と思い、少しだけカーテンを開けて外を見た。


「お前がこの時間に朝練来るなんて珍しいな!」
「昨日はゆっくり眠れたんじゃ」


私は外にいる人を知っていた。
正確に言えば、私はその人を紙の中でしか見たことはないが。


丸井ブン太、仁王雅治――


私の中である仮説が思い浮かんだ。
こんな話、夢小説で読んだことがある。


もしかしてこれは俗に言う……


「トリップ……?」


マジで?

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