124 懐かしい感覚
「……は?」
"お前、久遠俊だな"
転んで傷だらけのこの少年は、確かにそう言った。
呆然としていると、少年が俺に近寄ってきて、俺を睨んだ。
その瞳は、――……真っ赤な色をしていた。
少年はもう一度問う。
「久遠俊、だな」
「っ、」
俺はその赤い瞳に捕らえられて動けず、何も言えなかった。
少年はそんな俺の状態を無視して俺の腕を引いて姿勢を低くさせ、頭を手で掴んだ。
「今は詳しく説明している暇はないから簡単に、一度だけ言う。
――今からお前を一時的に元の世界へ……久遠俊に戻す。五十嵐有梨が危険だ」
「は?」
久遠俊に戻す?
五十嵐が危険?
少年の早口に俺の頭はついていけなかった。
「目的はひとつ。
"俺"を止めろ」
「は? え、ちょ、待っ――」
俺の言葉は聞かず、少年の俺の頭を掴む手に力が入る。
瞬間、世界がぐにゃりと歪む。
あれ……?
この感覚……
身体が重くなる。
あーなんかこの感覚懐かしいなー……
なんて呑気なことを思っているうちに――俺は意識を失った。
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