暁の空へ | ナノ


  123 胸騒ぎ


[仁王side]


朝から胸騒ぎがしていた。

朝練にも身が入らなくて、自分でも何故かわからなかったが、…………

……五十嵐が、気になった。


「仁王!」
「え、っどぅわ!


目の前をテニスボールが横切る。

尻餅をついて衝撃を受けた腰をさすっていると、真田がやってきた。


「仁王」


真田の手が俺にのびる。
まさかこんなことで鉄拳くらうことになろうとはな……

そう思って目を閉じて待つが、どれだけ経っても衝撃は来ない。
そろそろと目を開けると、真田が俺に手を差し伸べていた。


「早く立て」
「え、」


俺が恐る恐る手を握ると、ぐいっと凄い力で立ち上がらせられた。

鉄拳はないのか?


「朝からこの調子だな、仁王」
「う゛っ」


ぐさりと何かが胸に突き刺さった。
真田はため息をついた。


「……気になるなら行ってこい」
「え……」


行ってこいって……五十嵐のとこに、だよな……?


「練習の邪魔だ。行け」
「真田……」


俺はありがとな、と真田に言って駆け出した。




























駆け出して数分。

五十嵐のいる病院は走って行ける距離なので走っていたのだが……


「……」
「……」


少年が目の前で派手にコケたなう。
某SNSに呟くならこんな感じだろうか。

つまずくものなんて何もないのにな……

……一応、声だけかけとくか。


「お、おーい……大丈夫かー……」
「……」


少年は無言で起き上がり、パンパンと服についた砂などを落とした。
多少膝が擦り剥けているが、大丈夫そうだ。


「足元よく見て歩けよ、じゃあな」


俺は早く行かないといけないんだ、と 走りだそうとしたその時だった。













お前、久遠俊だな

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