123 胸騒ぎ
[仁王side]
朝から胸騒ぎがしていた。
朝練にも身が入らなくて、自分でも何故かわからなかったが、…………
……五十嵐が、気になった。
「仁王!」
「え、
っどぅわ!」
目の前をテニスボールが横切る。
尻餅をついて衝撃を受けた腰をさすっていると、真田がやってきた。
「仁王」
真田の手が俺にのびる。
まさかこんなことで鉄拳くらうことになろうとはな……
そう思って目を閉じて待つが、どれだけ経っても衝撃は来ない。
そろそろと目を開けると、真田が俺に手を差し伸べていた。
「早く立て」
「え、」
俺が恐る恐る手を握ると、ぐいっと凄い力で立ち上がらせられた。
鉄拳はないのか?
「朝からこの調子だな、仁王」
「う゛っ」
ぐさりと何かが胸に突き刺さった。
真田はため息をついた。
「……気になるなら行ってこい」
「え……」
行ってこいって……五十嵐のとこに、だよな……?
「練習の邪魔だ。行け」
「真田……」
俺はありがとな、と真田に言って駆け出した。
*
駆け出して数分。
五十嵐のいる病院は走って行ける距離なので走っていたのだが……
「……」
「……」
少年が目の前で派手にコケたなう。
某SNSに呟くならこんな感じだろうか。
つまずくものなんて何もないのにな……
……一応、声だけかけとくか。
「お、おーい……大丈夫かー……」
「……」
少年は無言で起き上がり、パンパンと服についた砂などを落とした。
多少膝が擦り剥けているが、大丈夫そうだ。
「足元よく見て歩けよ、じゃあな」
俺は早く行かないといけないんだ、と 走りだそうとしたその時だった。
「
お前、久遠俊だな」
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