105 流れ込む映像
"雫色(しずくいろ)"
"鷺坂結衣(さぎさか ゆい)"
その名前を聞いた瞬間、私の脳裏に映像が流れ込んだ。
"有梨ー! 今日はあたしの家で放送しようよ!"
"暁は渡さないわよ"
"え、……かれ、し……?"
"っははは! なんだ、そんなことか!二人ともお幸せに!"
"っ有梨!!"
"
逃げて! 有梨ーっっ!!!"
「……何か、思い出した?」
不二の声でハッと我に返る。
「……わからない」
「わからない?」
「映像が、流れ込んできて……」
"逃げて!"
逃げて?
何から?
さっきの映像がフラッシュバックした。
あれは……この世界にくる直前の出来事………?
「……あ、でも、結衣のことは、思い出したよ!」
「ほんと?」
「じゃあ何を思い出してねえんだよ」
宍戸が聞く。
「ここにくる、直前の記憶」
それを言った瞬間、宍戸と不二の空気が一瞬で鋭くなった。
「……どう、したの」
「……どうやら、お前は覚えてるみてえだな?」
「そっちこそ」
ちょっと待って覚えてないの私だけ!?
そんな私の心中を察したのか、不二は私と宍戸を見て言った。
「どうやら、話さなければならないみたいだね」
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