6 標準語の詐欺師
「はい、お疲れ様でした〜」
「おつー」
放送が終わり、ほっと一息つく。
話題が無く、しんとした時間が流れた。
ここで私はずっと気になっていたことを口にした。
「仁王ってさ、」
「ん?」
「何で"詐欺師"になると標準語になるの?」
「え、」
目を泳がせる仁王。
……何かまずいこと聞いたかな?
「あ、ごめん、答えたくないなら別に」
「いや、……やっぱり、"仁王"にこれは変か?」
「……え?」
確かに、"仁王"に標準語は似合わない。
でも……どういうこと?
「私は仁王が"詐欺師"だってばれないようにわざと標準語にしてるんだと思ってたんだけど」
「え? あ、あぁ、そうだ! その通り!!」
よくわかったな、と私の頭をガシガシと撫で、大笑いする仁王に、私は違和感しか覚えなかった。
まぁ"テニスの王子様"の世界では仁王はペテン師なわけだし、イリュージョン的なものだろう。
うん。
「次枠やる?」
「次枠で弁明しないと暁ファンに殺される」
失敬な。
私のファンに人を殺すような人はおらぬ。
《暁、電話がきてますよ》
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