3 事件前の平穏
一方ジェットコースター前では・・・・・・
チームメイトとバラバラになってしまった金田一が、
今いるメンツに不安を覚えていた。
「(俺以外皆年上だしこういうときどうしたら・・・!!)」
松川はこの状況をただなんとなく見ているし、
西谷はなんとなく金田一と松川を睨んでいるようだし、
東峰はもはや見た目が怖く不良のようである。
「あー、とりあえず並ばないか?」
堰を切らした松川はジェットコースターの方向を指差して言った。
「ッス!!」
「そ、そうだね!ほら、西谷も!」
東峰も西谷の背中を押した。
そして少しギクシャクしながら彼等はジェットコースターの列の最後尾へと向かった
*
「こちら、待ち時間は30分となりまーす」
遊園地のメインアトラクションの一つであるジェットコースターともなれば並ぶものである。
松川たちはその最後尾に静かに並んだ。
「な、なぁ・・・、今日くらいはバレーの敵味方とかやめないか・・・?」
東峰は弱々しく提案した。
彼自身、この沈黙に耐えられなかったのだろう。
「そうだな。このまま黙っててもつまらないし。
じゃあ改めてお互い自己紹介でもしないか?まだ結構待つみたいだし
俺は松川 一静」
「お、俺は東峰 旭!」
「西谷 夕 ッス!!」
「き、金田一勇太郎です!!」
会話終了・・・
「(俺が提案したんだからなんとかしないとな・・・)
なぁ、西谷」
「なんすか?」
松川は西谷に話しかけた。
「お前確かリベロだったよな?
最近らっきょう・・・あ、金田一のレシーブが乱れててな、何かレシーブのポイントとか教えてやってくれないか?」
「松川さん今らっきょうって・・・」
「ら、らっきょう・・・(笑)」
松川のらっきょう発言に、
金田一は少しショックな表情を浮かべ、
東峰は申し訳なさそうに笑いを堪えていた、
一方西谷は
「お前らっきょうなのか!!?」
と興奮気味に金田一の肩を掴んだ。
「うええ!?お、俺は人ですよ!!?」
金田一は狼狽えながら答えを返す
そんな光景を何となく見つめる松川と、心配そうに見つめる東峰であった。
*
「旭さん!一静さん!勇!もうすぐっすよ!!」
それから金田一は西谷にレシーブのコツ(と言ってもほとんど擬音だったので金田一には理解出来なかったが)を聞いたり、
松川が西谷のレシーブを褒めたり、
西谷が東峰の武勇伝(東峰の容姿ゆえの勘違い話)を語ったりと、
初めのギクシャクした雰囲気が嘘のように皆で仲良く騒いでいた。
「東峰も大変だな」
「そうかな?西谷は凄く強気で、いいやつだよ。
西谷を見てると俺も頑張らなきゃって感じがする」
東峰は西谷を見て言った。
松川はその目に友情のような、少し違うような、でも、とても強い絆のようなものを感じた。
「そっか、なんか烏野も楽しそうだな」
「うん、賑やかで楽しいよ。青城も楽しそうだよね」
「あぁ、主に主将がな(笑)
けど、一年も二年も個性的な奴ばっかだな」
松川は愁いを帯びた目で空を仰いだ。
東峰は松川がしたその仕草の理由が分かる。
「(俺たち三年生は今年で終わり、なんだよな・・・)」
「旭さん!一静さん!ほら、俺たちの番ッスよ!!」
「早く乗りませんか・・・!」
西谷と金田一が目を輝かせて二人を呼ぶ。
「「((今日くらいは何も考えずに楽しんでいいよな))」」
「今行く!」
「あっ!待ってよー!」
この時、誰が予想しただろうか
ジェットコースターで彼にあんな事が起こるなんて・・・・・・
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