菅原さんちの双子のお兄さん | ナノ


  1 菅原さんちの双子のお兄さんは目立つのが苦手


「あー……極楽」



ふわりと優しい風が頬を撫ぜる。
この時期の屋上は最高だ。



「元気にしてっかなあ……」



黒髪のウィッグの下から覗く銀髪を見て、愛する双子の弟を思い出した。



「……早く、帰りてえなー」












菅原さんちの双子のお兄さんは目立つのが苦手














いつも通りの学校。
いつも通り2時間目の授業が終わったところで、いつものように "屋上でサボりたい症候群" が再発した。

この時期はあの屋上の極楽がたまらない。
一種の薬物だよね、あれは。

てことで屋上にレッツゴー!!



「キャー!及川さんよー!!」

「キャー!」
「及川さーん!」
「こっち向いて及川さーん!!」



俺は思わず耳を塞いだ。

うるせえなあ……
だからあいつらは苦手だ。



「ふわあぁあぁぁ……」



でっかい欠伸をすると余計に眠気が押し寄せてきた。
さっさと屋上行って寝よう……









「ふわあぁあぁぁ……」



「……マッキー」

「んー?」

「……あんな地味な奴ウチの高校にいたっけ?」

「お前知らねえの?寧ろあいつ"地味"で有名だけど」

「正反対に位置する俺にはそんな情報入ってきませんー」

「(後で岩泉に殴ってもらおう)……あいつは俺のクラスの菅原悠支。影薄すぎてどこかにフラッといなくなっても誰も気付かない。そんな奴だよ」

「マッキーのクラスってことは1組か……」

「何だよ考え込んだりして……気持ち悪い」

「ヒドッ!……マッキーちょっと菅原くんに昼休み屋上来るように伝えててくれない?」

「え……お前そういう趣味だったの?」

「だあああっ!違うって!ちょっと聞きたいことあるだけだって!たいしたことないから!」

「無性にメロンパンが食べたい」

「わかったわかった!買っておくから!よろしくね!」

「へーい」









「っくぅーー!!!!」



ごろん、と屋上に大の字に寝転がる。
超気持ちいい!最高!

あ、読者さんはじめまして。
菅原悠支(すがわら ゆうし)といいます。
烏野の愛すべき菅原孝支は愛する双子の弟(と書いてマイスウィートエンジェルと読む)なんだ。

青城一の地味男とか言われてるけど、容姿は孝支と瓜二つ。
ただ、目立つのが苦手だから黒髪のウィッグと伊達眼鏡で隠してる。

ちなみにチャームポイントは右目下の泣きボクロ☆
(あ?誰だよどこかの王国のキングの真似だとか言った奴)



あ、ところで皆さんお気づき?

そうなんだよ俺は孝支のこと大好きなんだよ!!!
愛してるぜマイスウィートハニーエンジェル孝ちゃん!!!!!!

だってあんなに可愛い子が!!
この世にいていいのかってくらいめちゃめちゃ可愛いのに!!
何故愛さないでいられましょう!!!!!

でも訳あって俺は青城、孝支は烏野に進学、と辛い目に合ってる。

そんなわけで毎日こうして屋上でサボって寝る前には必ずこう願うんだ!!



「孝支の夢見られますよーに!」




















孝支は可愛いなー

え、俺のが可愛い?そんなわけないでしょ!!!
孝支のが可愛いの!!!
ああもうアホ毛たってるし超可愛い、いてっ

ちょ、こら、指でほっぺを刺して攻撃なんてこれまた可愛、いてっ

ちょ、やめ、ああもう、



「可愛いすぎんだよー!!」

「うわああああ!!!!!」



……ん?


ガバッと起きた俺の横に、どこかで見たことがある桃頭がいた。

あ、確か同じクラスのバレー部だ。
さっき及川の隣にいた……

てか何、めっちゃ見てる、何、何で見られてんの、え?



「……何?」

「しゃべった……」

「しゃべった?」

「いや、喋ってるとこ見たことなかったから」



ああ、"しゃべった"って、俺のことか。
そりゃそうだ。
なんてったって俺は地味原地味男。
学校で相槌以外の言葉発するの久しぶりかも。



「何か用?」

「ああ、及川が昼休みに屋上来いって」

「は?」



及川が?
昼休みに?
屋上に?
来い?

つーかここ屋上ですけど。
そしてこいつ飲み物とコンビニの袋持ってるし、もしかして今昼休みなんじゃね?
つまり及川もうすぐここに来る?



うん。よし、逃げるか!←



「何で呼び出されたかは知らないけど、"菅原はいませんでした"って言っといて!」

「あれ、何か用事でもあるの?」

「いや、用事っつーか……ん?」



明らかにこの桃頭のとは違う声がした。
恐る恐る顔を向けると、

そこには

にこにことした仮面を張り付けている、

俺の苦手な



「コ……コンニチハオイカワサン……」



及川徹がいた。











「……」



……何がどう間違えてこんな状態になっているんだろう。

俺は今及川徹他、バレー部の奴らに囲まれている。

……俺何かした?



「おい及川、こいつに聞きたいことあるって言ったのお前だろ?てかメロンパンは?」

「はいメロンパン」

「おお、本当にメロンパン」



やったーと言いながらその場で空けてかぶりつく桃頭。ナイスだ桃頭。
そのまま及川の意識をそっちに持っていけば……



「菅原くん?どこ行くの?」

「!!」



ビクゥ!と俺は止まった。

……気付かれた、だと……!?



「あの、俺ら席外した方がいいですか?」

「ううん、全然大丈夫!さ、菅原くんこっちこっち」



腕を引かれてまた元いた場所へ逆戻りする俺。
……帰りてえ……(本日2回目)



「えっとね、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「手短にお願いします切実に」

「オッケー。じゃあ手短に言うね!













――バレー部入らない?」











「「「「……は?」」」」










……待て待て待て。


手短すぎんだろ!



「どういうことだよクソ及川」

「そうですよ及川さん。選手は足りてますよ」

「まあまあ、ちょっとこれを見たまえ」



ぐい、と及川に手を引っ張られた。



「ちょ……っ」

「この手。岩ちゃんならわかるんじゃない?どこかで見たことない?」



くるくると勝手に手を回される。
手……何かあったっけ?



「……綺麗な手だな」

「そう!綺麗な手!綺麗な手と言えば?」

「綺麗な手と言えば……?」



綺麗な手、という言葉で俺は一気に青ざめた。
手を引っ込めたいがなかなか及川握力が強い。抜けない。クソッ……



「もー!綺麗な手と言えば俺の手でしょー!!ほら!!」



バッと俺の手の隣に及川の手が並ぶ。
おー、やっぱり及川も手入れしてんだなー……じゃなくて離せ!クソッ!俺の手に触っていいの孝ちゃんだけだからあああああああ



「……それがどうかしたんすか?」

「んもー金田一鈍いよ!」



例えばここ!と親指の付け根あたりを指差される。
あああ……見ないでくれ……



「ここ、固くなってるでしょ?ほら、俺のも。多分金田一もじゃない?」

「あ……はい。スパイクやってるから……あ!」

「そう!これはバレーやってる人特有のアレなんだよ!つまり!」



及川はバッと俺の方を向いた。





「菅原くんはバレーやってるんでしょ!」





……どうする、どうする菅原悠支!


正直に言う?でもそうしたら平穏な生活がなくなる予感!

でもごまかす?どうやって?



………………………………うん、諦めよう。



「そうだったら、何?」



精一杯の強がりでそう言ってみた。

やっぱりー!とドヤ顔する及川。
それをド突く岩ちゃんさん。
いいなあのポジション。
俺も殴りてえ。



「で、俺の予想だと、爪も手入れしてるあたりセッターでしょ?」

「……」

「え、違った?」

「……まあ……」



セッター寄りなのは双子の弟がセッターだから、かな。



「なぁんだ……どこかのチームに所属してるとかじゃないの?」

「いや……」

「今部活は?」

「いや……」

「じゃあ入ろうよ!バレー部!」



何故そうなる。
お断りします、と言おうとしたら、今度は及川にバレーボールが飛んできた。
及川の頭上ギリギリをもの凄いスピードで駆け抜ける。



「ぎゃっ」

「おーわりぃ。次は顔面狙うな」

「岩ちゃん酷い!今一生懸命なのに!」

「何でお前がそんなに菅原に執着すんのか意味がわからん」



そ れ だ


ナイス岩ちゃんさん!



「だって、俺こんなにバレーボールタコできてる人初めて見たよ!」



……は?
及川はまた俺の手を見始めた。



「俺よりタコできてんじゃん!普段どんだけ練習しうぎゃっ」

「困ってんだろうがよ」



岩ちゃんさんは及川にアイアンクローをかます。
ヤバイ岩ちゃんさんちょーかっこいい。



「わりぃな菅原。飯まだだろ?」

「うん、お腹すいた」

「まあ、こいつは止めても聞かねえ奴だから、一回見に来ないか?」

「部活?」

「それでこいつも気が済むだろうし」

「ナイス岩ちゃん!今日おいでよ!」



青城のバレー、か……



「見るだけなら」

「やったー!!絶対ね!!!絶対だからね!!!!」

「……」



早く帰りたいから一瞬見てすぐ帰ろう!


そう決心した昼休みであった。

そして地味キャラの維持頑張った俺!!

















放課後。



「……大丈夫ですか、菅原さん」

「おう……ありがとう、えっと……」

「1年の国見です」

「国見」



体育館をちらりと覗いた瞬間に体育館の中に引きずり込まれました。

そして逃走しないように監視されています。早く帰りたいのに……

国見は俺の隣に座った。



「……何でそんなだっさい眼鏡かけてるんですか?」

「……落ち着くから」

「ダテですか?」

「ダテです」



国見はポーカーフェイスだから怖いよな……実は全部気付いてます的な……

……あ、岩泉(名前教えてもらった)のスパイクカッコイイ。
でも岩泉だったらもう少し高く行けそう……
トスをあのタイミングにして……高さこれくらいで……ネットからこれくらい離して……

癖で考察を巡らせていると、トスを上げていた及川と目が合ってしまった。



「菅原くんトス上げてー!」

「制服だしお断りしますー」

「1本だけ!!1本だけ上げてくれたら解放する!!」

「じゃあやる」



ほんと早く帰りたい。帰ってマイスウィートエンジェル孝支で充電したい。

俺は立ち上がって及川たちの方へ向かった。
髪と眼鏡が邪魔だけど仕方ない。
ボールの感覚は身体が覚えてる。

スパイクは岩泉。



「お願いします」

「おう。いいやつ頼むぜ」



"いいやつ"



俺はボールを岩泉に軽く投げた。
岩泉はしっかりレシーブする。うまい。

今日の岩泉のベストポイントは……ここだ!!


軽くジャンプして地から足を離しつつ軽くトスを上げる。
そこへ岩泉が突っ込んできて、超インナーなスパイクを決めた。

おお、とそれを見ていた部員から感嘆の声があがる。



「おお、すげえな岩泉」

「いや、お前のトスが及川のより何か良かった」

「ウソッ!!岩ちゃんには俺しかいないでしょ!?」

「あ?寝言は寝て言えクソ川」

「岩ちゃああああんんん」



「じゃあ帰るなーありがとうございましたー」



及川と岩泉が口論してる間に、俺はスルリと体育館を抜け出したのだった。












「あの、帰っちゃいましたけどあの人……」

「まあ、そういう約束だったからな……」

「……岩ちゃん、菅原くんのフォーム、さ……」

「……どっかで見たことあると思ったよ、あのフォーム」

「「………"烏野の菅原"」」
























ぐったりと心身共に疲れきって帰ってきたマイホーム。
実は烏野は近いが青城は割と離れている。
結構遅くなっちまったが帰ってきてるだろうか……





ガチャ、





「ただい」

「悠支いいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!」

「うおっ!?」



玄関のドアを開けた瞬間ぴょーんと飛びついて来たのは俺の愛する愛する愛する愛す((ry
愛してやまない弟:孝支!!


「心配したんだよ!!こんなに遅くまで!!無事で良かったけどおおおおおお!!!!」



俺の肩に顔を埋めて抱き着いてくる孝支。

……もういいかな



「あいらびゅ孝支あいにーじゅー孝支いいいいいいいいい!!!!」



がっしぃ!!!!!

わしゃわしゃわしゃわしゃ


何もかも孝支が可愛すぎるのが悪い!!←

ああもう可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い


夢中になって撫でて孝支充電をしていると、孝支が俺の手を掴んだ。
え、なになに



「……悠支、俺、怒ってる。どこ行ってたの?」

「……ちょっと長く学校に残ってただけ」

「本当……?」

「おう。神に……いや孝支に誓って!」



じーっと俺の目を見た後、マイエンジェルはニカッと笑った。



「そっか!お疲れ様悠支!!」

「っ!!孝支いいいいいいいいいい!!!」



がっしい!!!(2回目)


あー好きだ。
孝支まじ可愛い。
好き。


……え、いつもこの調子かって?

当たり前でしょ!?!?!?←



「悠支ぃー……」

「んー?どした孝支?部活疲れた?」



ぎゅぅ、といつもより長い抱擁に(俺は大歓迎だけど)、俺は優しく孝支を撫でた。



「ん……ちょっと。元気な1年がいてさぁ……」



孝ちゃんを困らせる奴は俺が許さない!!



「何かあったらすぐ言えよ?光の速さで行くから」

「……うん、ありがとう悠支」



へにゃ、と笑う孝ちゃん。


………………。


………………………かっ



「可愛いすぎんだよこんちくしょおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

「えっ?悠支のが可愛いに決まってんだろおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」




実際は同じ顔である。




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