50 数年前の事件
『そういえば、数年前に反学園組織の事件があったって聞いたんですけど、その時財前先輩は学園にいたんですか?』
ずっと、気になっていた。
特力でそれを抑え込んだことも、聞きたかった。
「…おったで」
突然の質問に財前先輩は驚いた様子だったが、表情は変えずにそう応えた。
「その事件は……俺にとって、特力の皆にとって…忘れてはいけないものなんや。紗那にも、話しておかなアカンな」
忘れてはいけない……?
財前先輩は私の方を見ず、少し淋しそうな顔で話し始めた。
「俺は、5歳で学園に来たんやけどな、その事件はその6年後…今から2年くらい前のことや」
俺はその時、学園に来た時からずっと仲が良かった先輩がおった。
体質系の先輩で、俺はその人が大好きやった。
「名前は…
毛利玲生」
『!!』
毛利…玲生…
ある日、俺はいつも通り玲生先輩の所へ行った。
先輩がいつも居る、お気に入りの場所へと…
でも、そこに先輩はおらんかった。
先輩は高等部生やし、いろいろ忙しいんやと思って、あんまり気にせえへんかった。
そうして帰ろうとした時、ちょうど玲生先輩が来た。
「!! れおせんぱい!!」
「光……」
俺の名前を呼ぶ玲生先輩の瞳は、何も映っていないかのように虚ろだった。
「れお、せんぱい……?」
「……光……。………
さよならだ」
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