23 会員
『手塚先輩』
相変わらずポーカーフェイスの手塚先輩が私の隣――翼先輩とは反対側に――座った。
「安藤、もう少し真剣に授業に取り組め」
「へーい」
へらっと笑う翼先輩。
サボり常習犯だな…
「あ、そうそう。それで、そのPFの会員の印が、あれ」
『あれ?』
翼先輩が指差した方には、壁に大きく描かれた"三日月"があった。
「PFの会員は、必ずあの三日月を持ってるんだ」
『へぇ…いや、でもどうして特力系の部屋にこんなものが描かれて…』
「特別能力系が団体としてPFに加盟しているからだ」
手塚先輩が言った。
『…特力系が?』
「そうだ」
手塚先輩は懐から三日月のペンダントを出した。
――PFの証。
「あとテニス部も団体として加盟している…といっても、意思の固い奴らだけだがな」
「お前はどうする?」
『え?』
「入らなければいけないっていうルールはないぜ」
「ただし、学園を守る理由が無ければ会員として認めない」
私が…学園を守りたい理由…?
【学園を…守って…】
お父さんお母さんに言われたから…?
【聖雅っ!】
【おぅ! 美幸!】
違う…
私には、お父さんとお母さんの記憶があるからよくわかる。
『…私は、学園を守りたい』
「…何故だ」
【学園生活、楽しかったね】
【そうだな。学園が無ければ、この子も、生まれてないんだよな】
『学園には…思い出がいっぱいつまっているから…』
「は?」
『私の両親、学園の卒業生なんです。両親が出会ったこの学園を、壊したくない』
「…それだけか?」
手塚先輩が聞いてきた。
『え…?』
「俺には、お前が学園を守ることに命を懸けようとしているように見える」
『っ、』
「手塚さん…?」
なんて洞察力だ…
もういい、少しだけ言ってしまおう。
いずれ言うことだ。
『…私の両親は、卒業後、私が生まれても、反アリス学園組織と戦っていました。でも…』
カラになった紙コップを持っていた手に、無意識に力が入る。
『…私の両親は、反アリス学園の組織に殺されたんです』
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