ちいさな ちいさな うさぎさん 3




 紅先生のところに訪問する日が来た。

 ヒナタと共に、赤ちゃん用品の専門店へ行って、二人で色々悩んで購入したのはベビードレスと肌着のセット、それにバスローブ。

 何でも、赤ちゃんの肌は荒れやすいらしいから、素材もあと縫製とかも気をつけなきゃなんねーらしい。

 糸で引っ掛けて怪我しちまうとかもあるらしいからな。

 綱手のばあちゃんにアドバイスを貰っていたオレたちは、店員さんのアドバイスを更に聞いて購入。

 ヒナタが一目ぼれしたバスローブもあったけど、アレはいいよな。

 ウサギの耳が可愛い。

 しかもそれを見つめていたヒナタの可愛らしさっていったらなかった。

 すっげー可愛いのな、耳を遠慮がちにちょんちょん引っ張って、それでほわんって笑うんだ。

 で、それも贈ったら紅先生が喜ぶって言った時のヒナタの顔ったら……すっげー嬉しそうで、こっちまで嬉しくなっちまった。

 メッセージカードも、オレとヒナタの連名で入れて、店員さんにちゃんとつけてもらったから、これで準備万端。

 いつものメンバーが集まって、賑やかに紅先生の入院している病室を訪ねる。

 出産後も順調らしく、赤ちゃんを別室で見せてもらったけど、ちっさくて何か本当にこの小さな生き物がオレたちみてーになるのか心配になる程だ。

 むしろ……おなかの中にこんな赤ん坊が入ってるっていうのも密かに驚きだったりする。

 女ってすげーんだな。

 いずれヒナタも子供を身ごもり産むのか……って思うと、すっげー不思議。

 でもその相手が誰かって思うと、何でか胸の奥がキリキリする。

 何でだろうな、最近変だってばよ。

 そんなことを考えながらヒナタの姿を視線で追えば、紅先生に挨拶してさっきオレが渡した出産祝い袋から出した包みを紅先生に渡していた。

「出産祝いはいらないって言ったのに……」

 紅先生は困ったような顔をして、出産祝いだと包みを渡したヒナタを見る。

 そういうだろうと思ったさ、ヒナタも困ったような顔をしてからオレを見るので、オレは1つ頷いてからわざと大きな声で軽く言い放つ。

「あー、ソレさ、オレとヒナタの連名だから、受け取り拒否ナシだってばよ」

 そう言うと、みんながポカンとした顔をしてオレを見た。

 何だよ、その顔は……。

「ヒナタと……ナルト?」

「おう」

 紅先生が驚いたようにオレとヒナタを交互に見るから、素直に頷いて肯定すると、目を瞬かせる。

「は、はい、二人で選んできたんです。綱手様からアドバイスは頂きましたし」

「赤ちゃんって肌弱いから、優しい天然素材のもんがいいってことらしいぜ」

 開けてみてくれとオレが催促すると、促されるように紅先生が包みを開き、カードをまず見る。



 『ご出産おめでとうございます これからも親子共々元気でいてください うずまきナルト・ヒナタ』



「……アンタたち……ありがとう」

 うるっと目を潤ませながら、カードを大事そうに仕舞うと、箱の中から籠に入ったベビードレスと肌着のセットとヒナタの一目ぼれしたウサギのバスローブを取り出す。

「ああ、本当に可愛らしいわね。コレ……ウサギ?」

「は、はいっ」

「それ、ヒナタのひとめ惚れした奴な。ソレ見てるときのヒナタすっげーの、目キラキラさせて凝視してんだってばよ」

「だ、だって、か、可愛いなって……」

 クククッと笑って言うと、必死に真っ赤になって抗議するヒナタ。

 あの時のヒナタはすっげー可愛かった。

 いいもん見られたってばよ。

「しっかし、赤ちゃん用品取り揃えている店って、結構色々あんのな。買うもん大体決まってたのにさ、二人して色々見ちまった」

「うん、可愛いのいっぱいだったね」

「ああ、全部ちっせーの」

 ふふと笑うヒナタに笑いかけながら頷くと、紅先生はオレたちの話を嬉しそうに頷きながら聞いてくれたのに対し、カカシ先生は終始ニヤニヤ。

 あのさー、もうちょっと教師たるものがどういうもんか見習ったらどうだってばよ、カカシ先生。

 そう思ってるオレの前で、カカシ先生がニヤニヤ笑いのまま言う。

「ま、良かったんじゃない?予行演習」

「は?予行演習?」

 キョトンとしてオレがカカシ先生を見つめると、カカシ先生は意味ありげに笑っただけで、それ以上は言わない。

 何の予行演習だってばよ……。

「あ、これうちのお花です」

 いのが慌てて花を差し出し、キバとシノもそれぞれ個別に何かを持ってきたらしく、紅先生に渡す。

 なんだかんだで皆色々準備していたみたいで、病室は祝いの品でいっぱいになってしまった。

「本当に……ありがとう、みんな」

 小さな命の誕生に、オレたちみんなが祝うって、すっげー事じゃねェか?

 やっぱ、命の誕生はこうでないとな。

 オレの父ちゃん母ちゃんも、本当はこうやって腕にオレを抱いて祝いたかったはずだ。

 きっと……

 そんな事を考えていると、ソッとヒナタがオレの腕に手を添えてくれた。

 へへ……どうしてだろうな、ヒナタはこういう時、必ずオレに気づいてくれる。

 オレを見ていてくれる……嬉しいな……

 ヒナタもいずれ子を宿す……女はこうやって命を繋いでいく。

 男は、それを守らなくちゃなんねー。

「ヒナタ、アナタ最近一層綺麗になったわね」

 なにやら雑談をしている中、ソレだけやけにハッキリ聞こえて、オレは顔を上げる。

「そ、そう……ですか?」

「ええ、肌の艶というか……ハリ?化粧水何を使っているの?参考に教えてくれない」

 紅先生が微笑みながら言うと、ヒナタは焦ったように視線を彷徨わせた。

「え、えっと……そ……その……」

「日向御用達だったり?」

 いのがそう言って笑う。

 あー、アレ……使ってくれてんのかな……とか思うと、ちょっと嬉しくなる。

「あ、あの……米の……」

 あ……やっぱり、使ってくれてんだな。

 すっげー嬉しい!

 持って帰ってきて、ヒナタにやって良かったってばよ。

「えっ!?アレすっごい人気で手に入らないって言うのに!ヒナタっ!アンタどこで手にいれたの!?」

 と、すっげー剣幕で、いのがヒナタに詰め寄る。

 へー……そんなに人気だったのか、アレ。

「え、あ……あの……」

 ぶんぶん肩を掴まれ勢いよく振られているヒナタが答えられるワケもなく、されるがままだ。

 あーあー、ありゃ可哀相だな。

「あー、それオレがヒナタにやったんだよ」

「は!?何でナルトがっ!?」

「この前、任務の報酬で貰ったんだってばよ」

 な?と、サイに視線をやると、サイも頷いて見せた。

「何だ、ナルトはヒナタさんに渡すためにサクラにあげなかったんですね」

「喜ぶんじゃねーかなーって思ってさ」

 ニシシシと笑いながら言うと、一同全員何故か微妙な顔をしている。

 何だよ、お前らその顔は……

 ヒナタは真っ赤になってるし……どうした?

「無自覚」

 と、カカシ先生。

「無意識」

 と、サクラちゃん。

「とんだナンパ野郎だね、ナルト」

 と、サイ。

 何だよ、そのナンパ野郎って!

「どういう意味だよ、サイ」

「ちょっとは自分で考えてください。ヒナタさんも苦労しますね、こんなの相手だと」

「え、え?ええっと……あ、あの……その……」

 さらに真っ赤になったヒナタ。

 何だ?

「でも、ヒナタの肌、綺麗だよな」

 頬に手をやり滑らせると、いつもより滑らかでしっとりしている。

 ほら、やっぱりやって良かったじゃん。

 こんなに気持ち良い。

「あ……あり……がとう……」

 何故か涙目のヒナタを見下ろしながら、オレは首を傾げる。

 なーんかさ、さっきからヒナタ変じゃねーか?

「どうしたんだ?さっきから、顔赤いぞ」

「え、えと……そ、そのっ」

「ん?熱はねーし」

 コツンと額をぶつけて測ると同時に、部屋の中に怪音が響き渡る。

 何だよ、今の音。

 ネジ……お前大丈夫か?

 テンテンの手から落ちた贈り物だろう絵本の角が足に直撃したカンジがしたぞ。

「お前ら、どうしたんだってばよ」

「いや、お前がどうしたっ!!」

「は?」

 キバに叫ばれ、オレは首を傾げる。

「やけに、ヒナタへのスキンシップ多くねーかっ!?」

「そうか?」

 ふつーじゃねェか?

 キョトンとして聞き返せば、皆が揃って何を言っていいかわからない表情。

 なんだよ、言いたいことあるならちゃんと言えよなっ

 オレは何故か一同が固まっているのを見つめながら、首を傾げるしかなかった。








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