07.彼の友達と彼女の友達




 カカシに一言断ってから帰路に着いた二人は、ナルトの話を聴きながらヒナタが相槌を打つような感じで楽しそうに歩いていた。

「何だ、珍しい組み合わせじゃねーか」

「おや、ヒナタじゃないか」

 背後からかかった声に2人が同時に振り向くと、クラスメイトの奈良シカマルと砂縛高校の生徒会会長のテマリが並び立っていた。

「あ、テマリさん、シカマルくん、こんばんは」

「よお、シカマル……と、彼女か?」

「……まぁな」

 少し照れたような顔をしてそっぽ向くシカマルに、ニヤニヤと見てやれば、シカマルも負けてはいない、ジッとナルトとヒナタを見てフッと笑う。

「お前らがそういう仲だとは知らなかったぜ」

「ち、違うよ、シカマルくん、ナルトくんに失礼だよっ」

 真っ赤になりながら慌てて首を左右に振るヒナタに、ナルトは言いようのない何かを胸に痞えさせヒナタの顔を見ると、彼女の照れる可愛らしい姿に余計に言葉に詰まってしまった。

「で、ナルト、お前はどーしたんだよ。反論はねーわけか?」

 ニヤリと笑うシカマルに、ナルトは内心毒づきながら、口を尖らせ先ほどのシカマルと同じようにそっぽを向いてしまう。

 何だか面白くない、というのが、今のナルトの心境である。

「うっせーってばよ」

 不機嫌な声で答えれば、慌てたヒナタがフォローに入ってシカマルたちに説明をしているのだが、それがナルトの不機嫌の原因だと気づくこともない。

 その様子が面白くて、シカマルは苦笑を浮かべつつも相槌を打った。

「あ、あの……私が変な人に絡まれたから、ナルトくん……気にしてくれて、送ってくれるって言ってくれただけなの、だから、違うの」

「ふーん、まぁヒナタがそう言うならそうなんだろ、まだな」

 『まだ』というところを強調して言うと、ナルトがピクリと反応したが、シカマルは何も言わずにヒナタを見る。

「ナルトの勉強見ているのか」

 いつまでもナルトで遊んでいて、不貞腐れられては面倒だと思ったのか、話題を変えてシカマルはヒナタに話しかけ、ヒナタはコクリと頷いた。

「う、うん」

「頑張れよ」

「大丈夫、ナルトくん飲み込み早いから」

「へぇ、ヒナタがそう言うのなら、そうなんだろうな」

 今まで黙っていたテマリが1つ頷いて、ナルトを見る。

「確かに、体力馬鹿っぽいが、頭の回転は悪くなさそうだ」

「て、テマリさん……」

 ヒナタが困ったように言うと、ナルトがテマリとヒナタを見比べながら訊ねる。

「知り合いなのか?」

「うん、親同士が仲良くて暫く中学受験の家庭教師にも行っていたから……」

「ヒナタの家庭教師ぶりは中々のものだ、うちの弟たちも世話になったからな」

「げ、アイツら相手にそんなめんどくせーこと、よくやったもんだ」

 シカマルの言葉に、ヒナタは苦笑を返し、テマリも同じような顔をして頷いた。

 シカマルにしてみれば、あまり相手にしたくない相手なのか、口元が引きつって見えるのは気のせいではないはずである。

「我愛羅が礼を言っていた、今度お手製のマドレーヌなんて持ってきてくれると嬉しいな」

「はい、必ず」

「あー、ヒナタのお菓子うまいもんな」

 今日食することが出来たマフィンを思い出し、ナルトはニッと笑った。

 アレは絶品だったと、太鼓判を押せるほどの代物だ。

「ああ、そうだろう?」

「今日マフィンもらったけど、すっげーうまかったってばよ」

「ほう、それは運がいいな。そうだ、お前もヒナタと共に今度家へ来るか?奈良とヒナタの友達なら大歓迎だ。年の近い友の少ない弟がいるのだが、それでも良ければな」

「おう!オレってば1人暮らしだから、人が多いと楽しいってばよ」

「そうか、ならばヒナタ、予定を立てるから……」

 と、そこまで言って、相手の名前を聞いていないことに気づいて思案すると、それを察したナルトが慌てて名乗る。

「あ、すまねェってば、オレはうずまきナルト、よろしくな」

「こちらこそ失礼した。私は砂埜テマリだ、こちらこそ宜しく頼む」

 2人がえらく男前に挨拶しているのを横で見ながら、シカマルは溜息をひとつついた。

(めんどくせーことにならなきゃいいがな……)

「では、予定が決まったらヒナタからナルトに連絡を入れてくれ」

「うん、そうするね」

「じゃぁ、オレたちは書店に寄って帰るからよ、また明日な、ナルト、ヒナタ」

「おう、また明日な」

「また明日、テマリさんも後日」
「ああ、今晩連絡いれるよ」

 仲良く連れ立って歩くシカマルとテマリを見ながら、ナルトは思い出したように携帯を開く。

「じゃ、ヒナタ。オレとアドレス交換しようってばよ」

「え……あ……う、うんっ」

 黒ベースでオレンジ色のアクセントの入った携帯を開き言うナルトに、慌ててポケットから白ベースで薄紫色の装飾がついた携帯を取り出し赤外線通信を行う。

「よし、コレでいいな」

 相手のアドレスが電話帳に登録されたのを、2人で確認しながら頷きあうとナルトは思いついたように呟く。

「何かあったら、電話しろよ?さっきみたいなヤツに絡まれたら遠慮なくな?すぐに駆けつけてやるってばよ」

「で、でも……」

「約束だってばよ」

 小指を差し出し指きりだと、強引に彼女の右手の小指に絡ませて約束をとりつけると、満足げに笑った。

「ま、何気ないメールでも電話でも、ヒナタならOKだぜ」

「え、え?い、いいの?」

「おうっ!オレの携帯にメールなんてしてくるの、サスケくらいだしよ」

「えっと……う、うん……あ、ありがとう」

 柔らかい笑みを浮かべるヒナタに満足し、ナルトは彼女を促すように歩き出す。

「オレってば、ヒナタの世話になっているし、なのにヒナタのことあんまり知らねェし、知りたいって思うしな。だから、こっちからお願いしたいくらいだってばよ」

「わ、私で良ければ喜んで」

 会話だけ聞いていれば初々しいカップルのような会話であるが、いかんせん本人たちに自覚はない。

 そんなどこから見ても恋人同士のような2人は、何気ない会話をしながら商店街を抜けていくのであった。








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