もうひとつの呼吸の音が聞こえる。
○○は目を開いた。しかし久しぶりの陽の光に驚いてまた目を閉じてしまう。未だハッキリとしない頭のまま体を起こし、目をゴシゴシと擦る。そしてまたゆっくりと目を開いた。低い木々が○○を支えるかのように集まっている。○○は草の絨毯を少し撫でふわりと地面へと降り立った。寄せ集まっていた木々は何事もなかったかのように戻っていく。○○はグッと体を伸ばし、あくびをひとつ噛み締めたところで目覚ましとなった呼吸音のことを思い出した。
パプワ島にパプワと、ともだちのチャッピー以外にこうもはっきりと呼吸音が聞こえることはパプワがこの島にやってきてからは今まで一度もなかった。○○は小さく胸を高鳴らせ、パプワハウスへ向かった。


パプワハウスの扉を軽く2,3回叩くと、向こう側から忙しい足音がドタドタと足音が聞こえる。そして小さな体が扉を開け○○の姿を見ると嬉しそうに両手をあげた。

「ねーね!ねーねだ!」

「遅くなってごめんね。ちょっと寝すぎちゃった。ご飯、大丈夫だった?」

「大丈夫だゾ、下僕がいるからな!」

下僕?と小さく呟き扉の向こうを覗くと、そこには見覚えのない人影があった。その人はお玉を握りしめたまま硬直している。○○と目が合うとぎょっとした表情になりあー、だとうー、だと言いながら半ば挙動不審になった。○○はふわりと笑うと視線を彼方此方に移動している彼に近づき、小さくお辞儀をする。

「はじめまして、下僕様。私、この島のつくもがみをやっております、○○といいます」

「げ、下僕さ…!?俺にはシンタローっていう立派な名前があ…る……は?」

「あら、これは失礼致しました。シンタロー様!」

「いや…いやいやいや…は!?お前今なんつった!?」

「あら、これは失礼致しました。シンタロー様!」

「違う、その前だ!」

「えっと、私、この島のつくもがみをやっております、○○といいます?」

シンタローはまるで狐につままれたような表情で先ほどと同じように硬直した。○○はわけがわからない、と言ったような表情で彼を見つめる。そんな様子を見たパプワは彼らに近づき、シンタローの腰あたりをポンと叩いた。

「ねーねはこの島のえらーい守り神様だからな。大事にするんだぞ」

そう言いながらパプワは○○の後ろに周り○○の背中に手を伸ばす。しかしその手は○○の体をすり抜けて、○○のちょうどお腹のあたりからにょ、と出てきたのだ。

シンタローは、折角人間に会えたと思ったのに!と叫び膝から崩れ落ちた。

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