影山 飛雄
- ナノ -


言葉以上にまっすぐな 6




目を閉じていても、−−−いや閉じているからこそ感覚が研ぎ澄まされているのか、影山くんの顔が近づく気配を感じた。
そして唇に、ちゅ、と優しい感覚が降ってきた。

それは、一瞬だったのか。それとも、数秒たっていたのか。あまりに心臓がうるさくて、わからなかった。

ゆっくりを目を開けると、影山くんが…まるで眩しいものでも見つめるかのように瞳を揺らしていた。


「すっげードキドキして…心臓やぶれそうです」
「う、うん。わたしも」
「いつ息すんのかわかんなかった」
「ふふっ。わたしも」

そう言って、ふたりで笑った。

私はきっと、あなたが思ってる以上に、あなたでいっぱいなんだよ。すこしでも、伝わっているといいな。

「嫌じゃ、なかったっスか」
「影山くんになら私、何されても嫌じゃないよ」
「っ…..,ソレ、いま言うの反則っス」
「え?」

影山くんは、はああ、と深いため息をついてからすこしだけ私を身体から離した。
そしてもう一度、私の頬に優しく触れて、どこか追い詰められたような顔をして言った。


「名前さんの事、すげぇ大事にしたいのに、止まんなくなりそうで怖ぇ」
「…影山くん?」
「だいじに、します。名前さんのこと」
「う、うん」
「俺も、名前さんともっと早く知り合えてたら、ってずっと思ってた。及川さん達みたいな幼馴染だったら、とかって。でも、過去の事はもう…どうにもできねぇ。だからこれから名前さんと居る時間、すっげー大事にします。これからは俺が、ずっと側にいる。誰よりも」
「うん…ありがとう。私も、これからの時間をうんと大事にする。影山くんのことも、それから自分の気持ちも」
「ああ。…っと、それから。願い事は、俺が叶えるから!他のヤツじゃなくて、俺に!言ってくれ、何でも!」



そう言って影山くんは、興奮ぎみに鼻をふんと鳴らした。
まだ神さまにやきもち妬いてたのか…ふふ、かわいい。

かっこよくて、かわいくて。つよくて、まっすぐで。
やっぱり、影山くんってずるいなぁ。

願わくば。これからも、色んな影山くんを見られますように。

そして、さらに願わくば。彼に一番近いこの場所でこれからも、ずっと。








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