影山 飛雄
- ナノ -


恋人 2




「こーら。お前達、いい加減にしなさいよ」

澤村さんだった。俺が反論しようが縁下さんが間に入ろうが、全く止められなかった先輩二人が一瞬にして静かになった・・・さ、流石だ。

「影山は、恋人同士はクリスマスを一緒に過ごすとか、プレゼントだとか、そういうの知らなかったんだろ。お前、バレーばっかりでここまで過ごして来てそうだもんな・・・知らなかったなら、仕方ないんじゃないのか。苗字だって、そういうのわかって影山と付き合ってると思うけど」

澤村さんは、笑ってそう言ってくれたけど・・・。

−−−クリスマスは、コイビトドーシで過ごすもの。

プレゼントとか、渡すもの。

ま、まじか・・・!?
そうだったのか。




名前さんは昨日このマフラーをくれたときも、本当に何も言ってなかった。手作りだとも、何も・・・いや、待て。
よくよく思い返してみると、俺があの場で包装を開けた時・・・名前さんは、ものすごく心配そうにしてなかったか?それに、やたらと説明をしてた。
長さが合わないかもしれないけど、とか。色が好みじゃなかったらごめんねとか、無理して着けなくて良いからとか。
タオルをくれたときは、あんな風じゃなかった・・・それは、マフラーが手作りだったからなのか?


・・・俺は、とんでもない事をしてしまったのかもしれない。


「・・・田中さんと西谷さんの、言う通りっス・・・俺・・・」

事の重大さにようやく気が付いた俺が目を白黒させていると、田中さん達が少し心配そうな表情へと変わった。というよりは、あまりにアホな俺への哀れみかもしれない。

「か、影山・・・何、真っ青になってんだよ。らしくねぇじゃねーか!大丈夫だって、幸いな事に今日はまだ25日だろ!?」
「名前と一緒に帰るならよ、クリスマスっぽい事すれば良いじゃねぇーか!チューでも一発、名前にドカンとくれてやれって!!」
「そっか・・・、そうっスよね!!田中さん、西谷さん、あざっす!!俺、行ってきます!!」


俺はがぜんヤル気に溢れた心持ちで、飛び出すように部室を後にした。
今日も、名前さんと一緒に帰る約束をしていた。そうだよな、気付いたのが今日でまだ良かったと思おう。挽回すりゃ良いんだ!
待ち合わせ場所の裏門へ向かいながら、俺は名前さんがくれたマフラーを巻き直し気合いを入れた。

俺が出て言った後の部室で、俺のやる気が空回りしないか先輩達が心配していた・・・という話を、俺は後になってから日向に聞いた。









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