影山 飛雄
- ナノ -


こんな近くに




「おじゃましま〜す」
「ドーゾ。入って適当なとこ、座ってください」


メールのやり取りから数日後、約束していたオフの日がきた。

二人で放課後一緒に帰り、そのまま影山くんのお家にお邪魔してる。


影山くんの家は、外観からは見た事があったけど中に入るのは勿論初めての事で。
通された彼の部屋は、シンプルで整ったお部屋だった。

「影山くんのお部屋、綺麗で素敵ね」
「そうっスか?まぁ部活ばっかで、あんまり部屋にいる事も無いっスから…」
「ふふ、そっかあ。…あ、お家の方いる?お土産にと思って、お菓子持ってきたの」
「あざっす。たぶんまだ親とか帰ってないんで、後で渡しときます」


……え。
い、いないんだ!?

なんということか、これってホントに二人っきりだ。
男の子とこんな風に二人っきりなんて初めてなのでは…幼馴染とはあるけれど。
でも、トオルちゃんやハジメちゃん以外では、初めてだ。なんだか緊張するなあ。

私達は真ん中にあるローテーブルを挟んで、向かい合うように座った。
変に意識してしまった私とは違い、影山くんはとくに変わらない様子で普通にノートやシャーペンを出して勉強会の準備を始めてる。
私は自分が恥ずかしくなり、気をとりなおし教科書を広げる。自分が一年生の時、使っていたものだった。


「じ、じゃあ始めよっか?これ…この前影山くんに教えてもらったテスト範囲を元に、プリント作ってみたんだけど」
「え…これ、名前さんが?」
「うん、一年生のときのノートとかテストとか参考にして…教科担任が重なってる教科もあったから、これを抑えておけば結構良いセンいけるんじゃないかな?」
「うおお、あざっす!じゃあこれを丸暗記すれば、」
「だーめ。丸暗記だと、出題方法が違ったら間違えちゃうじゃない。ちゃんと仕組みや、流れから覚えよう」


唇を尖らせながら、「ウッス」と小さく呟く影山くんに、思わず笑ってしまった。やっぱり、可愛いなぁ。


「じゃあ、まずはコレからね。問題形式になってるから、まずはひとりでやってみて」
「ハイ!」

体育会系らしい爽やかすぎるお返事と、その後の机に向かっている姿はあまりに真逆の世界観だ。
がっちりとした身体つきに不釣り合いで、これまた可愛く見えてしまう。
バレーをしている時とはまた違う表情、眉間にシワをよせて一生懸命プリントに取り掛かる様子は微笑ましい。

もし、影山くんが同じクラスにいたなら…。毎日、こんな姿をそばで見ることが出来たのかしら。

なんか、羨ましいな。










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