「やめてー!!」


オズとブレイクが肩を抱き合って悲鳴をあげている。
まぁ、オズの方はノリだろう。
しかしブレイクは本気で怖がっているようにも見える。

まさか怪談が苦手とか…?

ギルバート自身はそういう話はわりと平気だが、確かに雰囲気があるところでやると本当に出てきそうで怖い。
だから怖い話が苦手という気持ちが分からないでもなかった。


今、ギルバートたちは怪談大会の真っ最中だ。
順番に怪談を語っていくことになっている。
今話しているのは、シャロンだ。


「それで、後ろを振り返るとそこには…」

「お、お嬢様!私、今日はもう休んでもいいですカ?」


唐突にブレイクが話を遮った。


「あら?怖いんですの?」

「こ、怖いに決まってマス!」


ブレイクは、怖いのは当たり前だとでもいうように開き直った。


「みんな怖いんですのよ…あなただけ逃げるんですか?」

「……」

「問題ありませんわね?」


シャロンは反論できなくなったブレイクに、微笑と共にとどめをさした。
まあ、この中に本気で怖いとおもってるやつなんて、ブレイクしかいないと思うが。

シャロンはにっこりと笑って話を再開する。
オズも楽しそうな笑みを浮かべていた。
もうすでにオズとシャロンの嗜虐心はむくむくと成長していることだろう。


「はいはい♪次オレがやるー!!」

「では、オズ様どうぞ」


「昔々あるところに、一人の騎士が住んでいました。その騎士の名前を仮にブレイクとするね♪」


オズが話し始める。
しかも嫌がらせのようにブレイクを話の中に登場させた。


「……!」


当のブレイクは、両手で耳をふさぎ、涙目でオズを見上げている。


「それで、ブレイクは夜一人で外を歩いてたんだ」

「オズ様、ブレイクはどの町に住んでいましたの?」

「レベイユだよ!ちょうど貴族のお屋敷の近く…ブレイクはそこを歩いてたんだ」

突然ブレイクが腕をギュッと掴んできた。
今にも涙が零れ落ちそうな瞳は、本当に不安そうで。

(―ヤバイ…こいつ可愛い)

しかしそれがさらに二人の嗜虐心をくすぐった。


「で、歩いてたら、後ろから足音がもう一つ聞こえてきたんだ」

「まあ…!」

「でも、振り返っても誰もいないし何もない」

「それで、どうなったんだ?」


アリスが先を促した。


「不気味に思ったブレイクは、家に帰ることにしたんだ…帰るときは足音は聞こえなかった」

「そ、それで終わりデスカ…?」

「まさか!家に帰ったら自分以外には誰もいないはずなのに物音がして、足音も聞こえてきたんだ」

「それで、どうなるんですの?」

「足音がだんだん近づいてきたんだ…ほら、ブレイク、聞こえるでしょ?」


オズの言葉に耳を澄ませば、確かに誰かの足音が近づいてくる。


「あら、本当ですわ」

「足音が聞こえるぞ」


カツ、カツ、カツ―。


足音はだんだん近づいてくる。


「でね、足音はついに部屋の前まで来て―」


ブレイクが腕を掴む力を強めてきた。


「止まったんだ」


あれ?そういえば、さっきの足音が聞こえなく―



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