*第九章 青龍の巫女
紅南国宮殿。
外はこんなにいい天気だというのに、窓辺で黙ったまま頬杖をつく雪を、仲間たちは時折顔を見合わせながら静かに見ていた。
ご機嫌斜めなのではない。彼女は今、心底落ち込んでいるのだ。
「な……なぁ、雪」
重苦しい沈黙に耐えきれず口を開いた翼宿に、雪は黙ったまま視線だけを向ける。
「どっか、散歩せえへんか?」
さっきからずっとそうなのだが――またもや声掛けに曖昧に笑って見せた彼女に、彼はつかつかと歩み寄っていた。ぎょっとして硬直する雪の手を取った時、小さく悲鳴があがったようにも思える。
「あっ、ちょ……翼宿っ!?」
「お前が元気なくしとると調子狂うんじゃー言うたろ!嫌や言うても連れてくで!」
翼宿が遠慮がちだったのは最初だけで、後はそのまま強引に連れ出されていった。あっという間の出来事である。
「翼宿なら、まあ上手くやってくれると思うが」
「それにしても……あいつあの後の事考えてんのかしら」
「多少強引な方がいいのかもしれんぞ。皆から優しい言葉を掛けられても、応えきれずずっと困っていたかもしれない」
仲間たちは思い思いに呟きながら、二人の背中を見送るのだった。