あいつがやってきた







可恋「…………は?」

音也「こんにちはっ!

   今日1日テレビの番組企画でこの学校にいさせて貰いますっ。

   一十木音也です!よろしくねっ♪」

   何だこれは、何だこの湧き上がる歓声は。

   何でここに………………

可恋「音也がいるんだぁあ……………」

   分からない人に説明しよう。

   私美神可恋は今大人気アイドル

   一十木音也の彼女なのである。

   同い年だけど、音也は学園を卒業して仕事やってる。
 
   私はその近く…といっても隣町なのだけど、

   フツーの公立高校に通っている女なのですね。

   で、こっからが本題。

   何故、お前がいる。

女子「…可恋?どした?何か暗いよ??」

可恋「あ、はは……ちょっと緊張しちゃって……」

女子「そうだよねぇっ!!あの音也くんと1日過ごせるなんて夢みたい!!」

   本当に夢であって欲しかったよ。

   音也は一通りの自己紹介を終えると、周りをキョロキョロし始めた。

音也「あれ?俺の席どこだろう…………」

先生「あ、好きなところに入っていいですよ」

音也「本当ですか!?」

   先生がそう言った瞬間湧き上がったのは音也意外の女子。

   みんな我の隣にアピールをしまくる。

   おぉ…流石アイドル。

   絶対にあいつを隣にさせたくないから、本当助かります。

   安堵して音也を見たとき、―――目が合ってしまった。

   音也くんは一瞬驚いた表情になりました。

   そして、とてつもなく天使のような笑顔を見せました。

   うん、眩しすぎて失明しそう。

音也「先生っ!俺、この子の隣がいい!」

先生「では、そこの席に座ってください」

音也「はーいっ」

   ………………マジ?

   音也は私の心境を知ってか知らずか、悪戯っぽい笑みを見せる。

音也「よろしくね?可恋」

可恋「…あは、あはははは」

   もう、こいつ嫌だ。










音也「あれ?この問題もう解けなくなっちゃった……」

可恋「……………………」

音也「可恋ー教えてよっ」

可恋「美神と呼んでください」

音也「えー何でー?」

可恋「理由などありません」

音也「…何かトキヤみたい。この間遊んだ時にうつっちゃった…」

可恋「のぁあぁぁぁぁああああ!!!」

   あ、やばい。授業中に大声出しちゃった。

先生「……美神、いくらとなりが芸能人だからって、いきなり叫ぶな」

可恋「す、すみません…………」

   案の定怒られたし………。

音也「授業中は、静かにしないとね?」

   アイドルスマイルでそういう音也。

   しかし、私は知っているぞ。

   裏ではかなり腹を抱えて笑っていることを。

可恋「…………………」



   誰か、今すぐこいつをこの高校から追い出してくれ。







女子「音也くんっ、一緒に弁当食べよーっ」

音也「いいよっ」

女子「きゃあっ!!やったじゃん!!」

音也「あははっ。空いてる席座ってー」

   何でお前が仕切るんだ。

女子「あ、私の席余ってない…」

可恋「いいよー、私ほかのところで食べるし」

   『よかったらどうぞ』

   と言おうと思った…のに。

音也「美神さんもここで食べるよね??」

   ゾクッ。

   幽霊がいるわけでもないのに、凄く悪寒が走った。

   言うまでもない、後ろでギリギリと私の手首を掴み、

   きっと満面の笑みでそう言ってる―音也だ。

可恋「………もちろん、ここで食べますとも」

   そう言わなきゃ後が怖い。



女子「えー音也くんてサッカー好きなのー?」

音也「うん!たまに同期の翔とサッカーしに行くんだよっ」

女子「翔くんもやるんだ!めっちゃ見てみたい!」

音也「あはは、今度番組でやらないか言ってみるね」

女子「やったぁ!」

音也「…美神さん?大丈夫?顔色悪いよ?」

可恋「…………………」

   誰のせいだよ。

音也「大丈夫かなぁ?美神さんいつも凄く元気なのになぁ」

女子「いつも?音也くん可恋のこと知ってるの?」

音也「うん!何で知ってるかは秘密だよっ」

女子「えーーー可恋何で言ってくれなかったのー!?」

可恋「…………私は、一十木音也くんなんて知りませんでしたよ」

   そういうので精一杯だった。








音也「みんな、今日は色々ありがとう!楽しかったよ!」

女子「帰らないで一十木くーん!」

女子「ずっとここにいてーーー!!」

音也「わっ、泣かないでっ!!」

可恋「…………ぐすっ………」

   よかった………本当に1日が終わってよかった………!!

音也「じゃあ、これで失礼します!ありがとうございましたー!!」

   みんなが拍手をする。
 
   私も今までで1番力強く叩いた。

   もう二度とこないで一十木音也。

音也「……あ。美神さん!俺の荷物持ってきてくれるかな?」

可恋「え…………」

   最後まで酷い奴だなおい。

女子「可恋ずるーい!私がやりたーい!!」

女子「ダメだよ。可恋は音也くんと秘密の仲なんだから」

女子「え、秘密の仲!?音也くん、もしかして付き合ってるの!?」

音也「あははっ」




   何故そこで否定しない。


可恋「全然、仲良くもないし付き合ってもないから!!」

   そう言って音也の荷物を潰す勢いで持ち、音也の後を追った。










可恋「…………音也??私を怒らせたいのかな?」

音也「んー怒らせたつもりはないよー??」

可恋「何で事前に私に言わなかったの!!こっちも色々したのに!!」

音也「色々って何するつもりだったの?」

可恋「『苗字で呼んで』とか、『私と音也は他人の設定』とか、

   『何が合っても話しかけない』とか!!」

音也「全部守ったじゃん♪完璧完璧!」

可恋「守ったの1つだけだろ!!…はぁ、本当にバレなくてよかった」

音也「どうせいつかはバレるからいいじゃん、バラしとけば」

可恋「絶対にばらさないから!」

音也「んーでも、絶対にばれると思うよ?」

可恋「何で!!理由は!?」

音也「だって俺と可恋が結婚したら、報道されちゃうじゃん」

可恋「…………………」

音也「あ、きゅんってきた?」

可恋「…なってない、馬鹿」






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音也がSーー。





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