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――「強い」とは、どういうことなのだろう。
自分はアキラの強さに追いつけたのだろうか。
アキラを守れるくらいには、強くはなれたと思う。
アキラをかばう位の力も、アキラを守るためにはどんな相手を前にしても動揺しない精神力も、今のケイスケにはある。
今ならこの大切な人を、この手で守ることができる。
だがそれは決して、歓迎すべき力ではない。
その力自体が、「悪夢」そのものだからだ。
アキラのように強くなりたいと願ったが故の、ケイスケの末路。
こんな人殺しの能力など、本来なら得てはならない力だった。
ケイスケは気がつかなかった。「悪夢の薬」を使うまでは。
ケイスケが克服しなければならなかったのは、強敵をも打ち倒せる「力」ではなく、強敵を前にしても揺るがない「精神力」でもない。
アキラに正直な想いを伝えられない、自身の「心の弱さ」だったのだ。
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