確かにそれは恋だった 1




出会ったのは図書室だった。その頃のぼくはまだピカピカの一年生で、そう、たしか学期末の試験勉強のころ。
ぼくはもともと勉強が得意だった…というよりは勉強に勤しむのが苦ではなかった。幼い頃から魔法省の持ち帰りの仕事を家でやっている父を見ていたからか、机に座ってテキストを読むことは自然なことなんだとおもっていた。友人たちはそんなぼくを見て、勉強を教えて欲しいと言ってきた。頼られることがとても嬉しくて快諾していたら そう、そういうポジションになってしまっていた。

セドリック・ディゴリーはいい人。
セドリック・ディゴリーはなんでも引き受けてくれる。分け与えてくれる。

まだ他の子と同じように学校に慣れていないのに 頼りにされるのは少しばかり大変なこともあったけど、それでも悪い気はしなかった。
今回も勉強をしに図書室へ行こうとすると、同じ寮の友人たちが「一緒にやろう」と言った。「一緒にやろう」と僕も言う。いつもの流れだった。

ホグワーツの図書館は本の森のようだ。立ち込める本の香りとページをめくるさざめきは耳に心地よい。
資料をさがして棚の奥のほうへと入った時、窓からのやわらかな日差しが差し込む開けた場所にでた。そこに佇む少女を照らし、空気中のほこりがきらきらと舞っている。
癖のないプラチナブロンドの髪は 前髪とともにサイドの編み込みと一緒に 後ろに流して花の飾りがついた髪飾りで留めてある。小さな顔、白い肌、チェリーの色をした小さな唇、まつ毛がすごく長い。少女が手元の本のページをめくる。すっと伸びた華奢な指だ。目の前にエルフのお姫様が現れたのかと思った。でもよく見ればホグワーツの生徒だった。少女はスリザリンのベストを着ていた。
本の表紙を飾る吟遊詩人が、本を持つディアナの指に触れてちょっかいをだしていた。魔法界の写真や絵画は動くのだ、変なことじゃない。それに気付いて少女は指先でトントンと叩き返した。絵と少女がくすくすと笑いあっている。なんだか不思議なものをみている気がしてセドリックは思わず「ふあ、」と息を漏らした。
本に落ちていた少女の目線がセドリックとかち合う。翡翠よりも蒼いーーエメラルドブルーの瞳だ。白銀のまつげに囲まれた やや吊り目気味のアーモンド型の目。その深さにセドリックは吸い込まれた。


「セドー、資料はみつかったかよー?」


向かいの本棚の方から自分を探す声がかけられて、我に変える。どうやらなかなか帰ってこないので探しに来たようだ。
少女は小さく息を吐き、読んでいた本を閉じて棚に返してしまった。本の背表紙がちらりと垣間見えるーー吟遊詩人ビートルの物語ーー有名な絵本だった。
立ち尽くしているセドリックとのすれ違いざまに小さく囁かれた。


「いい子ちゃんは疲れない?」


セドリックは頭をぶん殴られたくらいの衝撃を受けた。いい子でいるつもりはなかった。でも少し無理をしている気はしていた。それが自分の承認欲求を満たしていたということに セドリックは気付いたのだ。

後からハッフルパフの友人たちを当たって スリザリンのエルフ少女を探した。それはすぐに見つかった。
可愛いというよりは綺麗系で、頭が切れ、純血思考の貴族出身の正真正銘のお姫さまで有名のディアナ・マルフォイ その人だった。

学年末のテストが終わり、成績が張り出された大広間で2人は再び出会った。張り出された結果は彼女は1番、セドリックが2番。セドリックから「やぁ」と挨拶をする。


「君もだろ?」


セドリックの言葉にディアナは少し驚いた顔をして、くすりと笑った。2人にはそれで十分だった。








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