確かにそれは恋だった 2

ディアナ・マルフォイは噂通りのキツい女の子ではなかった。一部のスリザリン生のようにお高くとまってないし、地位も振りかざさない。純血思考だと聞いていたそれも、本人はいたってフラットな考えをしていた。ディアナが仲良くしているスリザリンの女子生徒はマグル生まれの魔女らしい。セドリックが「気にするかと思ってた」と素直に言うと彼女はひらりと手を振った。

「血は尊いとはおもうけど、血の良し悪しで人を見るのは ナンセンスでしょう?」

それともあなたもわたしを血や家でみるのかしら?とディアナのエメラルドブルーの瞳が挑戦的に煌めく。セドリックはそんな気は毛頭なかったので苦笑して体の前に手のひらを出した。

「噂では、きみは純血主義の貴族のお嬢さんで とてもキツい性格をしているようだから」
「ふふ 噂通りかしら? ーー知らない人たち全員に弁明してまわるのは馬鹿らしいじゃない。知ってる人だけが知っていればいいのだわ」

彼女はなんとはなく呟いたのだろうが、セドリックの心は高鳴った。それは その知っている人に僕がえらばれたということだろうか。
あの頃から時はすすんで、今は2学年の春だ。はじめて出会った時の妖精のような少女は、知れば知るほどにちゃんと人間で、そこもセドリックはとても好ましかった。この魔宝石のような瞳に見つめられたときから、セドリックはディアナのことが気になって仕方なかった。
セドリックは教科書の入ったカバンから本を1冊取り出し、ディアナに手渡した。


「はいこれ」
「ありがとう!ピンズ先生が授業中に言ってらしたのよね、分かりやすい参考書だからって…でもそれを聞いてみんな借りちゃって」
「それ、父さんが持たせてくれたんだ。ぼくはもう読んじゃったから、君が使わなくなったら返してくれたらいいよ」
「感謝するわ」

にこり、とディアナが笑う。セドリックの胸がふんわりとあたたかくなった。


「ねぇ大広間までいっしょに…」
「あっ スネイプ教授」


平静を装って何気ないふりで誘ったが、それは途中で遮られてしまった。
ディアナの視線の先ーーセドリックにとっては背後から 全身黒づくめの魔法薬学教師がこちらへと向かって歩いて来る。また後でね、とディアナはスネイプの元へと歩いて行ってしまった。
歩いてくるディアナに気付いてスネイプは立ち止まって片眉を上げる。常に不機嫌でおそろしいと噂されるスネイプだが、恐れることなくディアナはにこやかに話しかけ、なにやら話している。スネイプもいつもよりは眉間のしわを和らいでいるように見える。ディアナが以前 親とスネイプが知り合いで入学前からの付き合いだ と話してくれたのを思い出した。それにしても ディアナの表情は 先ほどのものよりひどく柔らかくみえるのは気のせいだろうか。セドリックは胸のあたりを無意識に掴んだ。

同級生の女の子たちに比べて、とても大人びて感じる彼女。見下ろした自分の手のひらはとても幼かった。



「セドー、廊下に突っ立ってなにしてんだよ」
「昼ごはんいくぞ。スコッチエッグあるかな?おれ腹減ったよ」
「セド、昼飯たべないのかー?」



「食べる! 大きくなってやる!!」


長身でもないディアナより大きくなるのに、それほど時間はかからないのだけど。後に、大切なのは中身なのだとセドリック少年は思い知る。









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